湘南ビーチFMウェブサイトに、2002年の二月より二年ほど掲載されていた「DJ’s Recommendation」への拙文を復刻・再掲載する。これは複数によるリレー連載で、僕は六本(実はもう一本)書いている。
尚、本文中、若干の語句の訂正を行った。
2002年5月5日初出
Name: アリ・オリー・ウッドゥスン(アリ・オリ・ウッドソン) Ali Ollie Woodson
Title: ライト・ヒア・オール・アロング Right Here All Along
「アリオリ」(←「ラビオリ」同様の平坦な発音でどうぞ)とソウル・ファンの間では通称され以前より評価の高いアリ・オリー・ウッドゥスンは、80〜90年代のザ・テンプテイションズ The Temptations のリード・ヴォーカリストとして知られる御仁。「トリート・ハー・ライク・ア・レイディ Treat Her Like a Lady」でリードを取っていた男が彼である。しかもこの曲の作者の一人でもある。デイヴィッド・ラフィン、デニス・エドワーズ等の後を継いだ彼を、テンプス歴代リード・シンガーのベストとして推す声も少なくない。僕もその一人だ。
どの時期も好きなんですけどね、結局は。
まぁ兎に角、渾身のシャウトとシビレるファルセトー(ファルセット)(どちらもイケるんですわ)、「オレ、歌上手いだろ?」とばかりにグワッと横に広がる鼻、女性しか眼中に無いかの様などスケベな眼差しと笑顔(うははは)等など、「ソウル好きが求める正しいソウル・マン」像に見事にハマるキャラクターの持ち主、それがアリオリである。
意外や意外、初ソロ・アルバムとなる本作は彼のレーベルであるオリウッド(”Ollywood”—うわっ、駄洒落だ…)からの発売。「寝室のドラマ」なんて、曲名の時点でもうダメだわアタシってなもんで、名曲・名唱がこれでもかと並ぶ。「ゴスペル仕込みの喉」を駆使した「スケベ丸出しの歌いっぷり」という、一見矛盾しているこの二つの要素を何故か無理無く融合させているソウル・ミュージックの、これはひとつのお手本であろう。
ジェリー・ゴフィン/キャロール・キング作品のカヴァー「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ」(ザ・シレルズ)や、元EW&Fのアル・ムケイ(マッケイ)をプロデューサーに迎えた数曲を含む本作。近頃本物のソウル・ヴォーカルが無いねぇ、とお嘆きの諸兄諸姉におススめ致します。聴き応え有りです。少々落ち着き過ぎの気がしますが、まぁ「敢えて苦言を呈すならば」程度の事。先ずは様子見という事で、次作ではもっと爆発してくれる事を信じて。
僕が購入したのは、昨年発表された欧州盤に一曲追加して今年新装再発された米国盤なのだけれど、この米盤ジャケの悲しいまでの最低ぶりも、これまたソウル・ファンの好みだったりして?!
所で、「R&B」という屈辱的な文化背景を持つ語句が、何故いま新しい黒人音楽(と黒人のふりをしたニッポン人ども)を指すコトバとして使われているのだろうか?
人見 ‘Hit Me!’ 欣幸 (音楽紹介業)
2010.6.1. 加筆:
結局、「次作」は出なかった。
2010年の五月三十日、彼は五十八歳で亡くなった。
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