June 5th, 2009. イシイ ポップス・イン・ザ・ボックス
提供:石井食品
vol. 584.
ホーン・セクションと言えば、
僕の場合はどうしても
アース、ウィンド&ファイアー(EW&F)のザ・フィーニックス(フェニックス)・ホーンズが筆頭。
M1
16:03 COME ON EILEEN
Dexys Midnight Runners
M2
16:07 BUS STOP
The Hollies
M3
16:12 IT’S A SIN TO TELL A LIE
Joe Sample featuring Lalah Hathaway
M4
16:14 A SONG FOR YOU
Leon Russell
ミドル4:アース、ウィンド&ファイアー
M5
16:20 SINGASONG
M6
16:25 SHINING STAR
M7
16:28 THAT’S THE WAY OF THE WORLD
M8
16:34 SIDE BY SIDE
Earth, Wind & Fire
M9
16:42 ONLY THE LONELY
Roy Orbison
M10
16:44 YOU’RE ONLY LONELY
J.D. Souther
M11
16:49 TRY A LITTLE TENDERNESS
Otis Redding
M12
16:54 HOLD ON I’M COMING
Sam & Dave
前前の弦楽器に続いて今回は管楽器に焦点を当てて。
弦楽器奏者やストリングズ・セクションを擁するバンドというのは少ないが、ジャズ時代からのソロ・シンガーのバック・バンド編成の流れから、管楽器奏者(主にサクソフォーン)を擁するバンドというのは多い。五十年代半ば(R&R初期)、独奏を例外としてギターが担当するは主にバッキングであり(アクースティックは勿論、エレクトリックでも大出力のアンプは普及していなかった)、ソロ・パートの花形はサクソフォーンだった(※)。
チャック・ベリーやビル・へイリーと彼のコメッツ(←敢えて当時の表記)のギター・ソロはさぞかし画期的だった事だろう。そしてザ・クリケッツ(バディー・ホリー)の登場。
ホーン・セクションとなると、これを抱える大編成バンドは維持が大変なので更に少なくなる。番組内でも触れたが、もとより八〜九人というメンバーを抱えるEW&Fの場合、ホーン・セクションはその中に含んでいない。コロンビア移籍後、正規メンバー内の管楽器奏者は一名、サクソフォーン奏者のロニー・ロウズとその後継アンドリュー・ウールフォークが居るのみである。
THE PHENIX HORNS
saxophone: Don Myrick ドン・マイリック
trombone: Louis Satterfield ルーイ・サタフィールド
trumpet: Rahmlee Michael Davis ラムリー・デイヴィス
trumpet: Michael Harris マイクル(マイケル)・ハリス
実は「ザ・フィーニックス・ホーンズ」という表記はEW&Fのアルバムには無い。
彼等がEW&Fのアルバムに参加しているのは「Gratitude(灼熱の饗宴,’75)」から「Powerlight(創世記,’83)」であるが、セクションとしての表記が有っても “Our Horn Section” であり、多くの場合、十名以上居る管楽器奏者の中の四名としてバラバラにクレジットされている。トゥアーに帯同するのはこの四名だが、プロデューサー=モーリース・ワイト(ホワイト)の「良いレコードを作る為」という考えから、それ以外の奏者もスタジオ盤では登用されていた(※※)。
番組内でこれに就いて触れるとクドくなるので止めたが(笑)、今回の四曲で彼等の演奏がばっちりフィーチュアされているのは実はM5のみ。M6とM7は参加前の楽曲で、M8は彼等以外のメンバーも参加している時期にあたる。
「フィーニックス」の名を得る(名乗った? 命名された?)のはEW&F関連以外の活動も始める八十年代に入ってからの事だったと思われる。フィル・コリンズ、ジェネシス、大橋純子等のアルバムでその表記を確認出来る。
ホーン・セクションとしての彼等(のみ)の演奏を堪能出来るのは、むしろジェネシスの「ノー・リプライ・アット・オール」、コリンズの「ススーディオ」やライヴ・アルバム(メンバーは一名代わっている)かも知れない。御試しあれ。
尚、サタフィールドはベイシストでもあり、EW&Fのヴァーディーン・ワイト(ホワイト)は彼が自分の師であると度々発言している。
(※)ザ・デイヴ・クラーク・ファイヴ等、六十年代にサックス奏者を擁したバンドには保守的な(=古い)香りがした。
その後七十年代に入り、サックス奏者を擁するボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンドやブルース・スプリングスティーン&ジ・E・ストリート・バンド、イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズ等が登場する頃以降は、「古い」というよりも「ちゃんと流れを踏まえた正しいロックン・ローラー」という肯定的な取られ方をされる傾向がある。
グレアム(グラハム)・パーカー&ザ・ルーマー(ルーモア)、フォーリナー、ヒューイ・ルーイス&ザ・ニューズ、ジョン・キャファティー&ザ・ビーバー・ブラウン・バンドといった、ひとつの流れがある。人肌の温もりのちゃんとある音楽性という意味で共通した点を挙げられるだろう。
(尚、この考え方にはJ.B.、スライ、Pファンク、EW&F等のソウル/ファンクの面々は含まない。彼等はずっと黒人音楽界の「進歩派=正統派」なのだから。)
(※※)この考え方はギター、キーボード等、他のパートでも導入され、「何故自分が居るのに同じ楽器の部外者を使うのか」という各正規メンバーの不満を少しずつ買う様になっていく。
それが主な理由となり、黄金期のメンバーで最初に脱退をしたのはギターリストのアル・ムケイ(マッケイ)だった。傑作『Faces』発表後の事。
「Let’s Groove」を収録した次作『Raise! (天空の女神)』以降も名盤は続くが、そのひとランク上である「傑作」という表現で言えば、『フェイセズ』が最後の傑作だと僕は思う。
今回色々と調べていて知ったのだが、モーリース自身の最も好きなEW&Fのアルバムは『フェイセズ』だと近年のインタヴューで答えているのだという。何だかとても嬉しくなった。
人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’09. (音楽紹介業)
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