(第151回の続きとして読んで頂けると有難いです。)
矢作俊彦版「傷だらけの天使」一度目(!)読了。
面白かった。大変、面白かった。
前にも触れた通り、基本的に「傷だらけの天使」の基本設定に則った、「矢作俊彦の小説」であるという想いは、読み終えても変わらなかった。
例えば「ルパン三世」シリーズだけど「カリオストロの城」は「宮崎駿の作品」だ、という様に。
例えばダイアーナ・ロスの「ダイアーナ」が、結局は彼女が歌っているだけの「シークのアルバム」みたいだ、という様に。
↓以下、内容に少し触れます。いわゆるネタバレ。それでも良ければカチリとドーゾ。
敢えて指摘してしまえば、「ららら科學の子」に近い展開とオチが用意されいる。途中でそれに気付く方もあろう。それでも充分楽しめる筈だ。大体、謎解きを目的とした小説では無いのだから。再読に耐える文章力を、物語の展開を備えているという事になる。
そう。
推理小説から派生したものではあるものの、探偵小説・都市徘徊小説(※)を「謎解き」に焦点をあてて語るのは間違っていると思う。小学校の頃に、とある大御所の推理小説を読み、確かに面白かったけれど「これはもしかしたら、実は雑誌の付録クイズみたいに『問題』『答え』の二頁で済む事を一冊にしているのかな?」とふと思ってしまった事から、一気に推理小説熱が冷めてしまったという経験が有るので、余計に区別をしたいのかも知れないけれど。以前から「君も一緒に考えてみよう!」的な、読者である僕も考えなければいけないという使命には抵抗を感じ、しかも実際に考えても殆んど当てられなかった悔しさも、実は有る(笑)。
(結局、基本的に、ウルトラマンやウルトラセブン、仮面ライダー等と同じ感覚で、主人公を追い掛けているうちに話が終わるものが好きなのですね。今でも。三つ子の魂百まで。)
以降、本格推理「らしきもの」は、創始者である(ですよね?)エドガー・アラン・ポォの「デュパンもの」を再読する程度。トリック以前に、軽妙な会話が面白く、「読み物」としてとても楽しめるから。
やっぱり「それを、意識しないうちに、何時の間にか最初に始めちゃった人」って凄いよね。その意味で、僕の中ではポォ、手塚治虫、ザ・ビートルズは同じ括りだ。
(※俗に「ハードボイルド」とカテゴライズされるが、僕はいわゆるヴァイオレンスものは全く読まないので混同されたくない。しかしこれ以上に適当な語も探せずにいる・・・。それが悔しい。)
さて「傷だらけの天使」だ。
勿論登場してくる綾部貴子(修と同様に姿勢を正してしまったよ[笑])、そして辰巳、ヴァーチャルな登場の亨、まさかそういう登場?!の健太(スズキさんの息子って、もしかしたらここから命名していたのだろうか?)、そして、誰がモデルなのかが笑ってしまう程に解り易い数名。特にドーゾさんには大笑い。読んでる途中から、頭の中ではあの曲がずっと流れっ放し。ドーゾさんのリード・ヴォーカル曲じゃないのに(笑)。
誰も彼もが、客観的な善悪とは別の次元の「それぞれの正義」を懸けて、三十数年の時を経て再び衝突する。
思えば「近過去」を舞台にするのが得意(※※)な矢作俊彦が「ぴったり現代」を舞台にするのは珍しい(映画「相棒」の舞台挨拶って・・・じゃあ映画館の中に居るのは亨じゃないか!!)。プロット等は以前から暖めていたのかも知れないが、結構短期間でエイヤッと書き上げたのではと想像する。
それが、「雑誌連載後、大幅に加筆」という断りが付く事の多い彼の多くの長編とは趣を異にしているのだろう。勢いを感じる。よって、読む側も勢い良く読める。
という「喉越し」で通読した感があるので、噛みしめるのは、どうやら二回目だ(笑)。読み終えるなり、すぐに第一章を読み、ひとまず本を閉じた。
あと三十三章残っている。楽しみだ。
音楽雑誌を買って読んだり、立ち読みしたりるので、長編小説を読み進めるのって結構大変なのですよ。自業自得ですが。しかも三つ四つ、同時進行で読んでるし。
嗚呼、馬鹿なアタシ・・・。
人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’08.
※※「その年は長嶋の率いる野球チームが云々」という形で時期・年を特定する事が多い(笑)。「数字なら3と決めていた」スズキさん、世界のナベアツは好きだろうか?(笑)
矢作俊彦に関する拙文へはこちらから
コメント
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(転載しました。)
Commented by 逗子王様 at 2008-05-02 08:06 x
いや、こちらに書く事ではないかも知れないけど、最新の場所に一言。
……例のブツ、「魔都に天使のハンマーを」ゲット!
一応、アーロンエルキンズの新作(これも面白い!)も持っていたんだけど、出先からの帰りの電車の中で(ああ、横須賀に向かう電車だ!)「魔都に……」読み始めたら……面白すぎる!
止まらない、ってんで新逗子に降りてそのまま「ドトール」に直行、ずっと読んで、でもまだ終わらない、いや終わりたくない。
……人見さんの言うように、「ららら……」の新宿版ではないけど、にやにやしながら読んでおります。
ちょうと今、コマ劇場の前の映画館で「相棒」の舞台挨拶があったくだりを……おいおい、アキラと接近遭遇かよ……しびれます。
ここまで読んでだいぶ「謎」(?)も分かりかけてきたんで、ちょっと悲しい結末を予想してページを繰る手を止めております。
……あ、今修ちゃんの変換をして、気がついた! 修……治虫だ!
ひえええ、矢作俊彦がこれを書いた理由が、必然が! などと、楽しいですね(笑)
長くなってすみません。ウチのHPに書くネタでしたね(笑) Like
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転載までしていただいてありがとうございます(笑)
私まだ一回目を(!)全部読み終わっていないんで、人見さんの今回の書き込みはイントロしか読んでおりません。
多分、本日中に読み終わるので、そしたら。
『そうか、修と治虫には気付きませんでした。』
って、フツーは気がつきません。
俺も最初に「おさむ」とうってみて最初に出て来る変換文字が「治虫」だったんできがついたくらいで。
ってか、普通のパソコンの変換辞書の「おさむ」のトップは「治虫」ではないんですけどね。
で、前回の転載いただいた長い書き込みは、実はもっと長く(300行削れとアラートが出た)その全文プラスアルファはウチのHPの日記に載っております。
よろしくです。オサムちゃんの笑顔付きです。
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逗子王様
でしょ? でしょ? でしょ?
ですよね!
続報も御待ちしております。
人見 Like
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ずっと読み続けております……でも、まだ植わらない。もちろん終わってほしくないんだけど、でも、意外とというか、想像以上にこれは長い物語なんですねえ、いや、こりゃなかなかな長編じゃないかって気がついたときには嬉しかったけど。
ああ、やっぱり「こいつがあいつか」ってのが連発してきたけど、これはホント、「傷天」の名を借りた矢作長編ではありますね。
というか、ここまで書いちまっていいのか、つまりは別の人間が生み出した物語をここまで面白く決着を付けようとして良いのか、って思いますね。俺としては全くもってこの「決着」が最高! ですけど。
ま、他の人がどう思うかなんてどーでもいいですが、これ以上魅力的な決着を示せば良いんですよ。すべての物語はパラレルラールド。市川森一書かないかなあ。…今日当たり読み終わっちゃうかな。 Like
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…とりあえず、「読了」(一回目)をご報告いたします。
勘違いかもしれませんが、終章の所で「典子」の名前が違っているのではと思わせる所が。
いかがでしょうか。
しかし、アキラは(人見さんが謎解きものを読まないという事なのに)「江戸川乱歩」を読んでいたんですねえ。
いやいや、長くなる、ひとまず…
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