AC/DC。
今年の十月に、実に八年振りの新作が発売されるという発表がされています!
予定されているアルバム・タイトルは『ブラック・アイス』。今度はアンガスが札幌雪まつりに出品される様な氷像にでもなっているのでしょうか(笑)。
真実一路、デビュー時から一貫したロックン・ロールを演奏し続ける彼等の新作です。今更変わる訳でも、こっちもそれを望んでいる訳でもありません。彼等が、彼等のいつものやり方で、彼等らしい音楽を奏でてくれれば大歓迎!というファンが、世界中に何百万、何千万と居るのです。
英国生まれ、豪州育ち、つまりブリティッシュ・マナーにのっとった「正しい」ロックン・ロール。インタヴュー時は「クッキーと紅茶を用意しろ」というリクエストが来るそうです。くぅ〜、イッカス〜う!
ブルーズ、リズム&ブルーズ、チャック・ベリーの教えを忘れる事無く、基本的な楽曲構造を変えず、しかし、(主にプロデューサーの選択により)その時代の旬の「音像」をしっかり取り入れて、新鮮さを維持し続けている希有なバンド。
狂乱のパフォーマンスを展開する事で知られる彼等ですが、よく観ると、その狂気の持ち主=アンガス・ヤングが、一曲一曲の終わりで、上手・下手・中央のそれぞれに挨拶をしているのに気付きます。
そろそろ三十五年選手という位のキャリアになると、ライヴは大入り満員でも、新作に関しては「やっぱり昔の方が良いよね」と、そこそこの評価しか受けられない場合が多いのですが、彼等は違います!
近作もしっかり高評価を受けているのが素晴らしい所、バリバリの現役であると胸を張っていられる理由です。前作『スティッフ・アッパー・リップ』では、いよいよ The J.B.’s みたいなグルーヴ・メイカーという性格すら持ち始めている気さえします。
しかも今回のプロデューサーはブレンダン・オブライエン。これは正しい選択だと思います!!
彼は、特に九十年代前半、当時、僕が好きで聴いていたハード・ロック=メタリックではない、埃くさいアメリカン・ロックの多くに関わっていました。
例えば以下のものが。
(特記していないものはプロデューサーとして関わったもの)
この頃はまだブレンダンの名は気にしていなかった時期。
Shake Your Money Maker /The Black Crowes, ’90. エンジニア
The Southern Harmony and Musical Companion /The Black Crowes, ’92. エンジニア
「僕の好きなタイプのロック」を規定したとも言えるのが彼等です。つまり「ハンブル・パイが最高」という。あれ?ザ・ブラック・クロウズじゃなくて?(笑)
Blood, Sugar, Sex, Magik /Red Hot Chilli Peppers, ’91. ミクサー、プロデューサー:リック・ルービン
八十年代後半から、リック・ルービンが「正しいロック」の正義でした。ブレンダンはリック絡みのエンジニアとして重宝され始めたのです。
この四枚はリックが設立したレコード会社、デフ・アメリカン(のちアメリカン)所属ミュージシャン。クロウズが稼ぎ頭でした。
Nobody Said It Was Easy /The Four Horsemen, ’91. エンジニア
Hollywood Town Hall /The Jayhawks, ’92.
Dynamite Monster Boogie Concert /Raging Slab, ’93.
Necktie Second /Pete Droge, ’94.
八十年代のフェイセズ=ジョージア・サテライツのリーダーだったダン・べアード。彼もアメリカンに所属していました。ブレンダンはバンド・メンバーとしても参加。
Love Songs for the Hearing Impaired /Dan Baird, ’91.
Buffalo Nickel /Dan Baird, ’96.
○実はブレンダンがプロデューサーだと知ってからパール・ジャムに興味を持ちました(笑)。次作は十年振りにブレンダンが手掛けているらしいです。
VS /Pearl Jam, ’92.
Vitalogy /Pearl Jam, ’94.
Mirror Ball /Neil Young, ’95. ←演奏者三名が匿名で参加。でもみんな知ってる(笑)。
No Code /Pearl Jam, ’96.
Yield /Pearl Jam, ’98.
○STP絡みでブレンダンはVRのセカンドを手掛けたのでしょうか。結局その後、スコットは抜けちゃいましたけど。
Core /Stone Temple Pilots, ’92.
Purple /Stone Temple Pilots, ’94.
Tiny Music /Stone Temple Pilots, ’96.
Libertad /Velvet Revolver, ’07.
○Get a Grip /Aerosmith, ’93. ミクサー、プロデューサー:ブルース・フェアバーン
このアルバムへのミクサーとしての貢献で、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル・ファンにブレンダンの名は広まったかも知れません。そりゃあもう、エアロスミスですからね。再結成後の最高傑作という呼び声も高い一枚(僕はその前作『パンプ』に一票ですが)。
何でもミクシングの過程で「違う!」と行き詰まっていた時にブレンダンは呼ばれ、最初に調整卓に座って出した音で「それそれ!」と絶賛されたそうです。でもそれは、まだ何も音質調整をしていない、つまり「録れていた音を、試しにそのまんま出した」だけだったそうで(笑)。
「何もいじらない音が最高」という彼の基本的な考え方を良く示すエピソードです。
○傑作の誉れ高い『ガールフレンド』( ’91)より、こっちの方が好きですね。音に惚れる。
100% Fun /Matthew Sweet, ’95.
Blue Sky on Mars /Matthew Sweet, ’97.
The Thorns /The Thorns, ’03. マシュー、ピート・ドロージュ (Pete Droge)、ショウン・ミュリンズ (ショーン・マリンズ、Shawn Mullins) という、少し地味なスーパー・バンド(笑)。
○レイジもそうだったとは! 今回知りました。少し下のロック・ファンだと、もしかしたら「これしか知らない」という方が多いのかな?
Evil Empire /Rage Against the Machine, ’96.
The Battle of Los Angeles / Rage Against the Machine, ’99.
○ゴリゴリのロックも、スカスカのシンガー・ソングライターも、生々しい音で仕上げるのがブレンダンです。
Jackyl /Jackyl, ’92.
Superunknown /Soundgarden, ’94.
Resigned /Micheal Penn, ’97.
Bachelor No.2 /Aimee Mann, ’00. 元ティル・チューズデイ。
Rebel, Sweetheart /The Wallflowers, ’05. ボブ・ディランの息子ジェイコブ在籍。
○近年のブルース・スプリングスティーンの復調は、E・ストリート・バンドとの再会は勿論ですが、ブレンダンの好サポートもあっての事だと思っています。特に去年の『マジック』での音のガッツといったらもう!
The Rising /Bruce Springsteen, ’02.
Devils and Dust /Bruce Springsteen, ’05.
Magic /Bruce Springsteen, ’07.
○これも今回知りましたが(持っていないので)、こんな所にも居たのですね。脱帽。
MTV Unplugged /Bob Dylan, ’95. ハモンド・オルガン奏者
十数年前、湘南ビーチFMが多分「ハヤマFM」だった頃、ヴォランティアとして御邪魔させて貰っていた番組で「ドライヴに最適な音楽」という御題を貰い、
「それならブレンダン・オブライエン作品集だ!」と、
The Black Crowes
Matthew Sweet
Dan Baird
The Four Horsemen
Raging Slab
という辺りを入魂の選曲にてオン・エア!・・・ハード・ロック色が強かったせいでDJに嫌がられた(笑)という記
憶があります。そりゃあそうだ(笑)。
アメリカ中部・南部のまっすぐなハイウェイなら兎も角、湘南・葉山の、しかも確か放送時間帯は土曜日の午後でしたからね。
ジョージア・サテライツの後継者的なリスト・アップを思いついてしまったもので(ダン・べアードに至っては元リーダーだし)。
R&Rで行くならジャーニーとかボストンとかにしておくべきでしたね。
話を戻しまして。。
そんな訳で、ブレンダンとAC/DC。
生々しい音
スタジオ・ライヴっぽい音
スピーカーのすぐ向こうで演奏し歌っている感じの音
を作らせたら最高の男=ブレンダン・オブライエンを迎えたAC/DCの新作。
悪い訳が無い、と信じております!
人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’08. (音楽紹介業)
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