２７５　緒形 拳、死去。

　十月七日朝、うっかりつけっ放しにしていたTVが、ちゃんと消さずに眠ってしまった事への復讐の様に、六時直前にこんな辛い情報で僕を起こした。

　緒形 拳が亡くなった。
　十月五日。享年七十一。肝癌による肝臓破裂の出血。
　親族のみで昨晩通夜を、今日これから告別式を行ってから正式に発表をする予定という。

　こちらは産経ニューズ。

　僕の中では、何ってったって、

「ちょっとマイウェイ」だ。

　’79（昭和五十四）年度下半期、NTV夜九時「グランド劇場」。
　僕の観てきた数少ない（あらら）TVドラマの中で最も好きなものだ。

　流れ者のフランス料理シェフ＝堀田康吉役。
　職人気質の気難しいコック長。ワケあり父子の「とうちゃん」（これが結構冴えない親父だったりするのだ）。八千草 薫扮する経営者姉妹の長女にぎこちない恋心を抱く不器用な男。
　彼にしか出来なかったであろう絶妙の格好良さと可笑しさで、コメディ･タッチのあのドラマを、下品なドタバタにならない格調ある喜劇に高め、見事に締めていたと思う。

　’92年公開の映画「おろしや国酔夢譚」は劇場で観た。西田敏行、三谷 昇等も出ていて興味深く観た。でも僕は「堀田さんが時代劇を」という思い入れにどうしてもなってしまって･･･。

　シリアスさを基調にし乍らコメディもお手の物という、幅の広い役者だったのだと思う。

　「ちょっとマイウェイ」を又観よう。
　局の中田経理と片野放送主任に何枚か貸したままだった。いま何枚手元に有るかな。

　（ちなみに僕はTVドラマを熱狂的に観た時期が非常に短い。その僅かな数年間に、しかも夢中になったドラマが少ない。「探偵物語」「ちょっとマイウェイ」「池中玄太８０キロ」という程度。偶然にも［なのか？］いずれもNTVだ。）

人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’08. (音楽紹介業)