湘南ビーチFMウェブサイトに、2002年の二月より二年ほど掲載されていた「DJ’s Recommendation」への拙文を復刻・再掲載する。これは複数によるリレー連載で、僕は六本(実はもう一本)書いている。
尚、本文中、若干の語句の訂正を行った。
2002年7月20日初出
Name: 熱帯JAZZ楽団(Tropical Jazz Big Band)
Title: 熱帯JAZZ楽団VI 〜En Vivo〜
Label: ビクター エンタテインメント
Number: VICJ-60961〜2
一昨年(2000年)夏のスペシャル・ライヴ(今年[2002年]は「Windows XP presents Shonan midsummer night jazz 2002」と題されている)で大いに会場を沸かせた熱帯ジャズ楽団の新作である。
葉山マリーナの夏空を星に染める頃に登場し、 あっという間にオーディエンスをビートとグルーヴで包み込み、盛り上げまくってステージを去った最強のラテン・ジャズ・ビッグ・バンド。僅か三十分・全四曲という内容だった。
御存知アース、ウィンド&ファイア(以下EW&F)のカヴァー「セプテンバー」を最後にブチかまして、「あともう一曲!」というところで嵐の様にステージを去った。
アオられてノセられて、そしてまだ興奮が冷め切らぬオーディエンスは、ステージから笑顔で立ち去る彼等、熱帯ジャズ楽団を「まだまだこれからだ! もっとやってくれ!」というような気持ちでついつい恨めしい眼つきで追っているようにも見えた。皆こう思っているに違いない。
「アタシをこんなにしておいて…!」
その「続き」が今年の八月三日、遂に訪れる。しかも今年はトリだ!
そして、その予習に最適といっても過言ではない直前リリースの本作は二枚組ライヴ盤だ!! デビュー作『ライヴ・イン・ヨコハマ』以来の、ライヴ盤としては二作目となる今作品は、熱帯ジャズ楽団にとって通算六枚目となるアルバムである。
EW&Fの傑作ファンク「ゲッタウェイ」で幕を開けた途端、総勢十七名による熱いカタマリのようなサウンドが、どエラい勢いでスピーカーから飛び出してくる。「マイ・フェイヴァリット・シングズ」(ザ・サウンズ・オヴ・ミュージック)も「ヴィーナス」(ザ・ショッキング・ブルー)も「ススーディオ」(フィル・コリンズ)も、彼等の手にかかれば同じ地平の「良い曲」といった感じである。アルバムを聴いていると、それらカヴァー曲の新しい魅力を、最高の演奏をもって再発見させてくれる。また、彼等のオリジナル曲がそれらと同等のクォリティである点も書き加えておかなければならないだろう。
そしてそして、アルバムの最後を飾るのが矢張り!一曲目と同じEW&Fの、そして一昨年のあの夏の夜と同じ「セプテンバー」なのだ。否が応でも今年のライヴへの期待は高まってしまう。
しかも、繰り返すが今年はトリだ。出し惜しみ無しの圧倒的なステージングに想いを馳せつつ、今はこのアルバムを聴く事で気持ちを盛り上げておきたいと思う。
今年(2002年)三月十九日、渋谷アックスに於けるライヴ録音。二枚組全十一曲(!)、六月二十一日発売(DVDも)。プロデューサーはリーダー=カルロス菅野。
補遺
湘南ビーチFM、八月第一土曜日のスペシャル・ライヴ。2002年のトリが彼等に決定し、タイミング良く新作、しかもライヴ・アルバムが出た際の文。
実は、かなり「直し」が入っている。僕の他の文章と若干違う感触が有るとすれば、それが理由だ。
局が仕事関係として御世話になる相手の宣伝文を局の公式ウェブサイトに掲載するのだからそれは当然。
僕の心配りが至らぬ所に起因した納得の改稿だったので、その辺りは誤解なさらぬ様。
どうも冗談や皮肉を交えた絶賛になりがちで(照れからくるのだが)、「手放しでベタ褒めをする文」を上手く書けない僕にとって、この遣り取りはとても勉強になった。
あれ?
勉強になっただけで活かせていなかったりして?(笑)
人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’08. (音楽紹介業)
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