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37 ザ・ポリース来日公演。 | GOOD TIMES | グッドタイムズ

37 ザ・ポリース来日公演。

(「人見欣幸のブログ」第九十五回と同内容です。)

ザ・ポリース来日公演。

 昨日、観て来た。
 今夜行かれる方もいらっしゃると思うので、とりあえず、先ずひと言。

 いくら期待しても良いと思います。

 僕が基本的に「再結成」を嫌う理由、特に「往時は『バンド・メンバー間の衝突』がハイ・クウォリティの源泉」というタイプのバンドの再結成を否定的に捉える理由である所の、

同窓会的な丸さ
舞台上の和んだ空気
営業臭さ
単なる往時の再現

が排された、本当にあの数年後でもこうなっていたであろうテンションが感じられた。

 昔から自らに課したハードルの高い三人。そのプライドが、唯一の汚点と言うべき「Don’t Stand so Colse to Me ’86 (高校教師 ’86)」」以降、二十年以上の長きにわたり再集結(正式には解散していなかったのだから)の障害となっていたのだろう。その「気高きもの」が「なぁなぁ」の再結成で終わってしまうのは嫌だったので、彼等の再結成には抵抗が有ったのだ。
 しかし。
 それは嬉しい事に杞憂だった。その彼等のプライドの高さはそのままだった。ちゃんと「『シンクロニシティ』の次」になっていた。其処が兎に角嬉しかった。

 ちなみに同様の理由からイーグルズの再結成に対しても抵抗感が有ったのだけれど、再結成から十余年、漸く出た初のスタジオ盤で、そのイーグルズとしての「続き」感(グレン・フライ主導と思われる)とシリアスさ(ドン・ヘンリー主導と思われる)が何とか維持されていると感じたので、僕はやっと評価し始めている。

 話しが逸れた。

 一年前にザ・ポリース再結成という話が具体化した時、ずっと人前に立ち続けて来たスティングは別として、残るステュワート・コープランドとアンディ・サマーズへの不安が有った。体力勝負のポジションであるドラマーと、既に六十代半ばのギターリスト。心配していた。

 しかし。

 もう「本当に御免なさい」としか言い様が無い。「我々を何者だと思っているんだ? 誰あろうこの我々自身がOKを出してるんだぜ。悪い訳が無いだろう?」と言われた気がした。

 彼等にしか出せないバンド・マジックが、おそらくはかなりの努力をもって再び現出していた(去年読んだコープランドのインタヴューで、それに就いて言及はしていたので、実は少し期待はし始めていたのだ)。
 一番の目当てであったコープランドの金物さばき(ハイ・ハット、シンバル類の使い方)は最高。流石にテンポは少し落としていたけれど、それは五十代を迎えたスポーツ選手に二十代三十代の頃のスピードを求める様なもので、無理な話だ。ザ・ローリング・ストーンズやザ・フーを基準にしてはいけない。あの爺様どもは奇跡なのだから(笑)。
 サマーズの飄々としたアクションも良い。ステイジ中盤の、ギター・パートが特に繊細な曲では、あの塗装が剥げたテレキャスターを使用してくれたのも嬉しかった。
 そしてスティング。多くの曲のキーが落ちている点に就いては、上記コープランドに関する喩えと同じく文句は言うまい。矢張りベイスを持って飛び跳ね乍ら、レゲエの要素を巧みに採り入れたR&Rを歌う彼が僕は好きなのだと再確認した。
 それらを過去の音源では無く、「今」の音として確認出来たのが嬉しい。

 そう。曲が全く古くなっていないのだ。曲が古びないから演奏者も古くならない。逆も言える訳だが。曲も演奏者も現役バリバリだった。

 舞台上の緊張感は維持されており、しかし、以前の「舞台上でのメンバー同士の喧嘩」という内向きに張りつめたその空気は、張りつめたまま、ぶつかり合わず束ねられて、客席に放射されていた。
 それを舞台に返すだけのテンションで客が彼等と真摯に対峙していたかどうか、という点だけは疑問が残るが、それは彼等とは関係の無い、客の問題だ。

 つまり、前評判通りの、「舞台はまだ現役バリバリなのに客がノスタルジックになっちゃっててOBな」ライヴだったのだ。その落差を楽しめれば、現役ロック・ファン(でしょ? こんなブログをしかも此処迄しっかりと読んでくれてる貴方は)も楽しめるライヴだろう。

 恐らくDVDが出る。それが楽しみになって来た。ちなみにジェネシスの去年のライヴは既に出ている。観たい! (CDは楽しめた。)

 エルヴィス、ザ・ビートルズ、レッド・ゼプリン、全盛期のストーンズ、全盛期のJB、フリー、ハンブル・パイ、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、レーナード・スキナード、・・・。
 どれも後追いである僕の世代が「彼等の全盛期を十代で実体験できた」と自慢出来る筆頭がプリンスとザ・ポリースだ、と改めて胸を張れる、それが確認出来ただけでも嬉しい。

 今日が最終公演なので、一応、演奏曲の明記は避ける。番組なり以降のブログなりで改めて。

人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’08.

人見 欣幸

音楽紹介業(ラジオ、活字、ライヴハウス、インタネット等で音楽を紹介)
1967年神奈川生まれ・育ち・在住
1978年より洋楽中心生活者
1991 文筆デビュー
1995 ナイル・ロジャーズにファンレターを渡す(交流開始)
1997 レギュラーラジオ番組開始
2011 Nile Rodgers/CHIC応援組織 "Good Times" を内海初寧と結成、同年よりウェブ番組 "Good Times TV" 開始(13年まで)
2019 新メンバーを加え、六月より "Good Times Tube" としてウェブ番組を復活

■favorite musicians:
Nile Rodgers,Bernard Edwars&Tony Thompson
山下達郎,伊藤広規,青山純&難波弘之
竹中尚人,加部正義&ジョニー吉長

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コメント

  1. nagi より:

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    おはようございます。
    ポリス、カッコよかったです!! この一言に尽きます。行ってよかったぁ。(Fiction Planeも要チェック。)
    生で観るのは初めてでしたが、アノ迫力には正直驚かされました。惜しむべきはもう少し音響の良いホールで聴きたかったことくらい。
    スティングの変わらない声と優しい瞳にドキドキし、サマーズの演奏を聴いた後で歳を知ってビックリし、コープランドの和太鼓に似たドラムに感動しました。
    今回時間がなくて予習復習ができず、曲のタイトルを勘違いしたり知らない曲があったりでしたが、一番好きな曲を聴くことができたので(コープランドの“左向き演奏”メイン♪)大満足です。
    意外だったのは、同世代が多いつもりが一回り近く上のサラリーマンが多かったこと。
    帰りがけ「(観れるのは)一生に一度だろうな」「最初で最後だろうな」と感慨深く話している男性たちが。電車に乗ってからも、デビュー当時の話や今回観れたことの感想など、一緒にいらした方たちと夢中で話していらっしゃいました。とても和む雰囲気で、何だかいいなぁとほんわかとした気持ちになりました。オヤジ世代、ちょっとカッコイイぞ!! Like

  2. GAKU より:

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    この後、雑誌等に様々なライブレポートが載るでしょうが、
    それらを読むまでもなく、この人見君のレポートが
    No1であろうことは間違いないでしょう。 Like

  3. hitmejapan より:

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    nagiさん
     「カッコよかったです!!」そうです、それです。
     僕も、多分コンサート中は、「かっちょいいなぁ」としか口にしていなかったと思います。それしか出て来なかった。
     理屈なんだ後付けで、先ず「格好良い」か「格好良くない」かが判断基準となるのはとても正しいと思います。
     「バカかっちょいい」という、そのワンランク上をいく形容も有ります(笑)。
    人見 Like

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