Rod Stewart ロッド・ステワート(スチュワート)の新作は
“Fly Me To The Moon…
The Great American Songbook, Vol. 5″。
こちらは CD ジャーナル誌のウェブサイト。
・・・。
駄目押しというべきか蛇足というべきか。
まぁそれはマーケットが判断するのだろう。
きっと売れるだろうけれど。
「五年振り」と言っても、九年間でスタンダードものが五枚だ。
前作迄の四枚は毎年。
次がロックのカヴァーもの。
次(前作)がソウルのカヴァーもの。
つまりオリジナル・アルバムの発売は『Human』(2001.2.) 以降無し。
九年間ゼロ。
僕は「又かよ・・・」と溜め息をつく方だ。
今年の一月で六十五歳になった。
2000年に甲状腺癌の手術を成功裏に終え、その嬉しさからか、この今世紀最初の十年を極めて順調に、否、それどころか実に多忙に過ごした彼。
現役でバリバリ歌ってくれているというだけで充分嬉しいという前提で敢えて書くが、「しかし寂しい」というのが正直な所。
だって、「久々にロニー・ウッドと組む」や「フェイセズ再結成」といった話が何度出た事か。それはことごとく実現しなかった。
だから尚更に寂しいのだ。
でもきっと買っちゃうんだよな。
中古盤で、馬鹿売れして浮動層が手放した再来年辺りにだけど・・・。
「セプテンバー・イン・ザ・レイン」が入る。なのに十月発売。
ラジオ DJ としては「遅い! タイミング最悪!」という所だが、つまり「ずっと売り続けていく=短期決戦を考えていない」というヴィジョンで考えているのだと思えば、それはとても正しいし羨ましい(※)。
特に日本が、何だか走り高飛びみたいな「All You Need Is 初動枚数」という競争にどんどん傾斜する様になっていったこの数十年を、がっかりし乍ら見て来た身としては、それは本当にとても羨ましい。
まぁレコード会社としてはスタンダードもので儲けてるんだから、たまにで良いから御褒美で、前みたいな趣味趣味のオールド R&R やソウルのカヴァーを数曲含んだオリジナル・アルバムも作らせてあげてよ、クライヴ・デイヴィス社長、と願う。ジム・クリーガンやトニー・ブロック救済の意味でも(笑)。
そんな「オリジナル・アルバム」には浮動層は手を出さないから、きっと「ソングブック」シリーズよりも売れないだろうけど、それを待っている「本来の、ずっとロッドを支えて来たオールド・ファン」の人数だけ、確実に売れると思う。
八十年代半ばの『Rod Stewart (aka Every Beat of My Heart)』みたいに着実にね。
聴きたいなあ、今のロッドが作る「新曲」。
取り敢えずはジャケの彼の笑顔を見てホッとしておこう。
何だかんだ言っても「憎めない、シャイな奴」なのだ、彼は。
人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’10. (音楽紹介業)
(※)
二十七年前の1983年、山下達郎は六月発売のアルバムを夏の終わりが舞台の「悲しみのジョディ」を一曲目に、「クリスマス・イヴ」を最後に入れた。
まぁ先行シングルだった「高気圧ガール」も入っていたけれど。
その年の夏から秋、その日数の少なくとも二倍以上は、僕はそのアルバム『メロディーズ』を聴いた筈だ。毎日毎日、朝から晩迄、何度聴いたか。
高校二年、秋の文化祭に至る、地学部員と放送委員としてのピークを彩るサウンドトラックだ。
毎日、
始まらなかった恋を夏の終わりに「二度と会えない」と嘆いたり、
「もう一度動き出せメリー・ゴー・ラウンド!」と叶わぬ願いをし続けたり、
クリスマスを「秘めた想い」を込めたまま寂しく迎えたりする、
そんな孤独な主人公達の歌と共に過ごした事になる。
二曲共、「相手」が登場しない。相手とああしてこうしてどうのこうの、というベタベタ・どろどろのラヴ・ソングではない。それもあって好きなんだろうな。
あ、後付けですよ。これ書いてて、今の今になって気付いたの、それに。
十六歳の夏。
歌の中の季節なんてどうでも良かった。
何の違和感も無かった。
出した側=山下達郎も当時の取材で「何で六月発売のアルバムにクリスマス・ソングなんですか?」と何度も訊かれて呆れたそうだ。
大体、標準的なレコーディング・スケジュールを考えれば、古今東西の数多のクリスマス・ソングの多くは夏から秋に録音されて来ていると思うのだけれど。
コメント