2011年6月21日の日記。
(翌日、湘南ビーチFMウェブサイトのトップ頁に掲載)
The Big Man ザ・ビッグ・マンこと Clarence Clemons クラレンス・クレモンズが逝った。享年六十九。フロリダで土曜日夜、即ち日本には日曜日午前にその悲報は届いた。その六日前の日曜日に自宅で突然倒れ、数回の緊急手術を受けていたという。この一週間、その事ばかりが僕の頭や身体をぐるぐると回っていた。精神的には「振り回されていた」というべきか。昨晩の番組では彼への追悼を行った。以降も同番組で少しずつフィーチュアしていく予定だ。
Bruce Springsteen ブルース・スプリングスティーンの事は1980年にその存在を知り、翌81年には好きになっていた。と言っても彼の過去の作品も含めて特集しているFM番組を聴いたりはしなかったし、旧作を自分で買う事も無かった。大体そのヒット作『The River ザ・リヴァー』でさえも、二枚組だったせいもあって同級生から借りていたのだ。しかもその次作は地味な『Nebraska ネブラスカ』(82)で、僕は早速離れてしまった。
その直後、83年にクラレンスのリーダー作が発表され、それを DJ が「これこそ八十年代の R&B だ」と熱く語って紹介し(渋谷陽一だ)、其処で僕は漸く彼を強く意識した。その直後=翌年である84年、ブルースの『Born in the U.S.A. ボーン・イン・ザ・U.S.A.』が出る寸前に知り合った先輩宅で僕は『Born to Run 明日なき暴走』に、「Jungleland ジャングルランド」に遂に出会う。高校三年の春。
(中略。後日、ブログ転載時に補遺[○〜◎]をする)
○ 先 輩の家に初めて御邪魔した時、即ち「ジャングルランド」と同じく The Who ザ・フーの「Baba O’Riley バーバ・オライリー」や小山卓治「ひまわり」に出会い、帰りにブルースのファースト、セカンドそして四枚目『闇に吠える街』(をコピーした TDK の AD)を頂いて帰ったその日曜日の午後に、僕は現在に至る「僕」になったと言っていい。只の「ロック物識り」になってしまいそうだった僕の精神が解放されたのだと思う。
サード『明日なき暴走』のカセットを貰わなかったのは、おそらく先輩が「それは買いなさい」と言ったか、僕が「それは早速買います」と意地を張った(笑)かのどちらかだ。
そ の先輩は今でも「こいつ(=僕)、初めて『ジャングルランド』を聴いた時、泣いたんだぜ」とからかいつつ同席者にバラすのだけれど、きっと彼もそうだったのだから(つまりそれは歓迎の言葉なのだ)嫌な気はしない。ギリギリのタイミングで『U.S.A.』より前に『Run』に触れていて本当に良かったし、十七歳で「激しい R&R で泣いちゃう事ってあるんだ」と(やっと?)知ったのも良かったのだと思う。
因 みに「泣く」と「泣いちゃう」は大違いだからね。僕は「泣く為の演出道具」という失礼な姿勢で音楽に接した事は無い。よって、逆にそれを目的化した「色恋沙汰や家族ネタの『あるある』で泣かせるネタを並べ共感させて商売する」姿勢の歌詞、音楽、音楽家には生理的な次元で抵抗を感じる。興醒めしてしまう。徹底的に醒めている。カラオケで印税を稼ぎたいだけとしか思えない。
泣ける本だの映画だの、スポーツで感動させるぜ♪ウッルットッラッソウルッ だの♪あっつっくっぬぁれ〜 だの、そういう余計な演出は本当に苦手だ。
感動はこっちが勝手にするものであって、それを極めて短絡的・直接的な基準で選んで安っぽいものに貶めた上で提供してくれなくていい。汚している事に気付いていないのだろうか。
僕 はそうではなくて、植木等風に「♪泣けて、く〜るぅ〜」話をしている。
閑話休題。◎
そ の「ジャングルランド」で特に涙腺を刺激するのがクラレンス・クレモンズによる中盤のサックス・ソロである。直後、僕は上大岡の中古盤店で『明日なき暴走』を見付けた。聞いた/買った時期も僕の年齢も、運命的なタイミングの良さだったと言えるだろう。「趣味は音楽鑑賞」程度の距離感だった音楽に、この時からどっぷりと「落ちた」。「人生を踏み外した」とも言うが(笑)。
クラレンスのサックスは、そうなってしまった主たる理由の一つに挙げられる。僕を「こうしてくれた」事への感謝と「こうさせた」事への恨みを込めて、心の底から「有難う」と言おう。
補遺
という訳で、初出時にカットした「中略」部を戻した。
書いているうちに長くなって了ったので「中抜き」にしたのだ。多分、七十年代のブルース・スプリングスティーンの組曲風のものも、作っているうちに長くなって了ったのだろう。それを「中抜き」する様になったのが『闇に吠える街』『ザ・リヴァー』以降。
さて、ヘヴィな読者は御察しと思うけれど、文中の先輩とは彼の事です。
彼のメイルアドレスは「keeponrolling○○@」だもの(笑)。敵わない。(○○には彼の名前が。)
人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’11. (音楽紹介業)
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