牧 伸二
が亡くなった。
四月二十九日。享年七十八。多摩川にて飛び込み自殺をしたとみられるという。
自殺。
特に彼の様な「笑い」を稼業にする方が自ら命を絶つという報せは本当に辛い。
何と言っても、こうして弔文をしたためようと思っても面白い事しか書けないというジレンマ。
でも仕方が無い、そういう人物であり、僕には彼にまつわる個人的なエピソードが有るのだから。
僕からの彼への感謝の気持ちを示すには、結局この事を記すのが最適だと思うから。
牧 伸二はごく初期の僕に多大な影響を与えている。
幼稚園にあがった頃の話だ。よって僕は明確には記憶していない。親が僕の失敗談というか自慢話というか、そのどちらも含んだ話としてよくネタにしているので後年僕自身もネタにしている。
入園初日だか何日目だか、兎に角、親同伴で通園している頃。
まだみんなシャイで怯えてて、泣き乍ら後ろの母親を探している様な状態だった頃。
困った先生が打開策として「じゃあみんなで歌をうたいましょうね~」と音頭を取って伴奏を始めたのは「むすんでひらいて」。
♪む~す~ん~で
みんなが泣いたりしている中、
♪ひ~ら~い~て
僕は物怖じせず
♪て~を~うって
そそくさと
♪む~すんで~
堂々とみんなの前へ歩み出て、
♪ま~たひらいて
と、平然と股を開いたそうだ。
牧 伸二が「大正テレビ寄席」でやっていたネタである。
結局、五歳からそういう奴だった、僕は。四十年以上、根本は変わりが無い。
有難う牧 伸二。僕をこんな風にしてくれて。
因みに、あの
♪あ~あ~あ やんなっちゃった
が、親の世代ならば誰でも知る有名なハワイアン・ソング「タフワフワイ(Tahuwahuwai)」の替え歌であると知るのは、湘南ビーチFMで「クマ・マクーアの Music of Hawaii」ディレクターを担当する様になった十五年くらい前の事だ。若者の音楽(軽音楽!)がラテンとハワイアンそしてムード音楽だった時代を思う。
牧 伸二も当然、その世代な訳で。
入水自殺はかなり苦しいと聞くので、せめてこれからは、どうか安らかに。
人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’13. (音楽紹介業)
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