ロイ・シャイダー (Roy Scheider) が亡くなったそうだ。
二月十日没。死因は多発性骨髄腫からくる血液細胞癌。ここ二年間は闘病の日々だったという。享年七十五。
映画通では無い僕としては、「フレンチ・コネクション」「ジョウズ」での彼、というベタな記憶だが、以前「Back to the ’70s」でも話したけれど、小学生の頃に映画館で観た、決して多くはない映画の一本として、「ジョウズ」は本当に鮮烈に記憶している。
怖かった。あんなものを小学三年だか四年だかで銀幕の大画面で観る運命。親に連れられて行ったのだが、どう考えても、「仮面ライダー」を部屋の反対側に隠れ乍らチラチラと観た(つまりちゃんと観ていたのだが[笑])という程の怖がりだった僕がねだった訳が無い。
社会現象化した通り、僕も本当に海水浴が怖くなった。(※)
海中からのサメの視線で海面を写すアイディアは素晴らしかったし。中々サメの姿を出さない「焦らし」のテクニックも良い。
音楽も怖過ぎる。
そして、僕の専門分野である(笑)怪獣SFものに共通する、「人間どもの浅はかなあたふた」の描写が素晴らしかった。目先の事、自らの保身を優先する、いわゆる「偉い人」の愚かさがとても解り易く描かれていた。
そんなシーンの中で、彼等に翻弄され、行き掛かり上、サメ退治の船に乗り込まざるを得なくなる警察署長を演じたのがロイ・シャイダーだ。昔気質の「経験と勘」を重視し、しかも一匹狼の荒くれオヤジと、最新機材とデイタで冷静にサメ退治をと考える若き研究者と署長からなる三人の遣り取りが面白い。まぁ判り易い人間関係ではある。
親と子、挟まれる子の配偶者。
新旧の外注技術者と、挟まれる社内の担当者。
舞台を変えれば身の周りによくある人間関係だ。そこはスティーヴン・スピルバーグ監督、手堅い訳で。(※※)
「フレンチ・コネクション」は随分後になってから観た。百二十分という大きな時間軸を生かした、犯罪捜査を丁寧に丹念に観客に説明してくれる手法は、手堅いと言えばそれ迄だが醍醐味が有る。
そして、「経験と勘」の時代の犯罪ものには、監督や出演者・スタッフの美学をさりげなく織り込ませられる、良い意味での「隙」が有った様に思う。007にしてもSFにしても、みんなそうか。そんな人間描写も味わい深い。
今は技術とスピード感だけで、美学なんて付け入る隙がないもんね。数値化出来る成績(性能)と、宣伝文句と、ディジタル画像のシミ取り技術を自慢しているみたいにツルンツルンの女優が印刷されたポスターと。
あ。
音楽もそうですね。
ロイ・シャイダーよ安らかに。
ちなみに極めて間接的な彼に関する情報として、「宇宙刑事シャイダー」の名は彼からの戴きである。特撮ファンとして一応記しておく。
人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’08.
(※)十年程前、「リング」の最初のTV放映をうっかり観てしまった僕は、暫く家中の灯りを点けっ放しで寝ていた…。あれは思い出しただけで本気で今も怖い。
(※※)考えてみれば、三谷幸喜の「みんなのいえ」の主役陣も同じ構図だ。
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