609 藤田まこと、死去。

藤田まことが亡くなった。
二月十七日。享年七十六。大動脈からの出血。
ここ数年は食道癌や慢性閉塞性肺疾患を患う等、心配な情報が続いていた。

 こちらは東京新聞ウェブサイト。

 先週亡くなった玉置 宏と同い歳だったのだな。

 僕は「スチャラカ社員」(※)は勿論、「てなもんや三度笠」も後追い、「必殺シリーズ」には数ヶ月だけリアル・タイムで観たが、「はぐれ刑事純情派」は午後の再放送でしか知らない。

 という事で夢中になって追っていた役者という訳では無いのだけれど、いつだったか、彼を特集した特別番組で観た東海林太郎の物真似に驚いた。歌手としてキャリアをスタートさせていた事を知ったのは多分その時だと思う。

 音楽を志し、コメディで頭角を表わし、シリアスな路線をメインに(結果として)晩年を生きた、という意味では植木 等やいかりや長介の歩みと重なる。

 三年前(2006年秋)のドラマ「役者魂!」(松たか子)は面白く観た。近年では珍しくしっかり全話楽しんで観た(※2)。藤田まことが扮したのは、芸能プロダクションの大御所(しかしお荷物)役者(シェイクスピア一筋!)。松たか子は彼に振り回されるマニジャー役なので、物語は彼を中心に進行していると言ってもいい。シリアスかつコミカルなキャラクターは藤田まことを念頭に置いての「あて書き」であったと思うのだが、役どころからもその演技でも、このドラマを引き締めていた。

 僕の場合、彼をしっかり役者として追った最後がこれになる。あとはプライヴェイトな入院だ退院だという仕事以外の情報。
 ここ数年の「必殺仕事人2007」「同2009」で仕事人稼業の若い者に引き継ぎ始めているのは知っていたが観てはいない。
 「はぐれ刑事純情派」の完結編を昨年末にやったのも今回の死去を伝える報道で知った。

 藤田まことと言えば、僕の場合は何と言っても「必殺仕業人」である。
 調べたら制作は1976年。僕はその七〜八年後の再放送で知った。高校生の頃、定期試験期間に昼過ぎで帰宅していた時期に10チャンをふとつけていて知ったのだと思う。

 中村主水よりも中村敦夫扮する赤井剣之介の活躍が目立つ作品だった気がする。主水は要所要所で(つまり美味しい所で)話を締める感じだった。そして何と言ってもオープニングの宇崎竜童のナレイションが衝撃的だが、「仕事人」とは違うシリアス且つシニカルな、乾いた作風に惹かれた(※3)。
 画面がやけに「白い」という印象で、何処かしらアメリカの西部劇や戦後探偵小説(僕がハメットやチャンドラーにかぶれ始めた頃と重なる)に似た空気を感じた。

オープニング・ナレイション(by 宇崎竜童/作:早坂 暁[そうだったのか!])

あんた、この世をどう思う? どうって事ねえか
あんたそれでも生きてんの?
この世の川を見て御覧なぁ石が流れて木の葉が沈むぅ-いけねェなあ。
面白いかい? あんた死んだ振りはよそうぜ。
やっぱり木の葉はぴらぴら流れて欲しいんだよ
石コロはジョボンと沈んで貰いてぇんだよ-オイあんた聞いてんの? 聞いてんのかよ!
あら? もう死んでやがらぁ。
ハァ〜菜っ葉ばかり食ってやがったからなぁ。

 これに殺られた。このオープニングだけ録音した。今でもほぼソラで言える程、憶えている。バックで奏でられるハイ・ハットとギターも素晴らしい。

 そして藤田まこと扮する中村主水をやっと認識、格好良いと思った。

 その頃の必殺シリーズ新作が「必殺仕事人4」だった。放送は金曜十時。何と「サウンドストリート」渋谷陽一を後回し(録音)にして何回か観ていた(未だ録画設備は我が家に無かった)。
 まぁ、直ぐに「仕業人」とは違う湿気(僕が特に苦手な日本のドラマの多くに共通する湿っぽさ)が気になり、渋谷陽一への忠誠を再び誓った人見であったが(笑)。

 上記の特番、確かNHKだったと思う。追悼の再放送とか、無いかなぁ。

(※)漫画「マカロニほうれん荘」でのそうじの台詞「スチャラカ社員ですか!?」でその名を知ったのだと記憶する。

(※2)「時効警察」「帰ってきた時効警察」それから三谷幸喜脚本作品以外では滅多に無い。

(※3)シリーズがブームになった頃に出た資料本を読んだ記憶では、何でも放送当時の「オイルショック等により高度成長期が終わって不景気に突入」という世相を反映した、シリーズでは異色作らしい。よって視聴率は低迷したそうだ。

人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’10. (音楽紹介業)

人見 欣幸

音楽紹介業(ラジオ、活字、ライヴハウス、インタネット等で音楽を紹介)
1967年神奈川生まれ・育ち・在住
1978年より洋楽中心生活者
1991 文筆デビュー
1995 ナイル・ロジャーズにファンレターを渡す(交流開始)
1997 レギュラーラジオ番組開始
2011 Nile Rodgers/CHIC応援組織 "Good Times" を内海初寧と結成、同年よりウェブ番組 "Good Times TV" 開始(13年まで)
2019 新メンバーを加え、六月より "Good Times Tube" としてウェブ番組を復活

■favorite musicians:
Nile Rodgers,Bernard Edwars&Tony Thompson
山下達郎,伊藤広規,青山純&難波弘之
竹中尚人,加部正義&ジョニー吉長

GOOD TIMESをフォローする
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
訃報、悲報
スポンサーリンク
スポンサーリンク
GOOD TIMESをフォローする
GOOD TIMES | グッドタイムズ

コメント

  1. GAKU より:

    SECRET: 0
    PASS:
    宇崎さんのナレーション、カッコ良かった。
    当時、僕も暗記していました。 Like

  2. hit2japan より:

    SECRET: 0
    PASS:
    GAKUちゃん
     「当時」か。流石だね。
     僕は「ウルトラマンA」「仮面ライダーX」「おもちゃ屋ケンちゃん」あたりの小学校中学年あたりからTVドラマを観なくなっちゃって(大体その頃から大人のドラマを全く観てなかったんだ、「ありがとう」さえ)、知ったのは高校になってからだもんね。
     中学生の時、TVK(テレビ神奈川)で放送してた「スーパーマン」を暗記したなぁ(笑)。あと中学の時はYMO『増殖』とスネイクマン・ショウ『急いで口で吸え!』だわな、何てったって。
    人見
    Like

  3. GAKU より:

    SECRET: 0
    PASS:
    『急いで口で吸え!』 
    僕は未だに表題作の内容の意味が分からないんですよねぇ… Like

  4. hit2japan より:

    SECRET: 0
    PASS:
    GAKUちゃん
     ああ、それは僕も解ってないよ・・・(笑)。
    人見 Like

タイトルとURLをコピーしました