エアロスミス、昨晩の東京ドーム公演。
「ラスト・チャイルド」終盤でスティーヴン・タラリーコ(本名)がスライ&ザ・ファミリー・ストーン「シング・ア・シンプル・ソング」の♪ヤ〜ヤヤヤ〜ヤ〜を重ねていて感動。
彼等のそういうファンク・ルーツはあまり検証/注目されずに来た。彼等は16ビートのリフが最高なのに。
例えば「ラットの先輩」ではなく「レッド・ホット・チリ・ペパーズの先輩」としての、つまりファンク・ロックの祖としてもエアロスミスは評価されるべき。
いつも書いている事だけれど、彼等をアメリカ東海岸の富裕層ではない白人(イタリア系中心)は黒人音楽ファンであるという系譜上に置くと興味深い。
つまり、
フランク・シナートラ ←ジャズ
ディオン&ザ・ベルモンツ ←ドゥー・ワップ
フランキー・ヴァリ/ザ・4・シーズンズ ←ドゥー・ワップ
ザ・ヤング・ラスカルズ ←ドゥー・ワップ、R&B
ヴァニラ・ファッジ ←ソウル
エアロスミス ←ファンク
ダリル・ホール ジョン・オーツ ←ソウル(都会派)
ブルース・スプリングスティーン他のニュー・ジャーズィ一派 ←R&B
ボン・ジョーヴィ ←NJ一派経由のR&B、Power Station studio のエレクトリック・ファンク(シーク他)
年代的にザ・ローリング・ストーンズの後輩ではあるが、彼等の影響も勿論強いとは思うけれど、彼等と同じ様に同時代(とその少し前)の黒人音楽を身につけるという「姿勢」の影響がかなり強いのだと思う。だから、年下故にエアロスミスはファンクが強い。
しかし1999-2000年の来日でJBの「ホット・パンツ」を演奏した時に客席の熱はサーッと冷めた。そういう部分に強く反応するファンは多数派ではない。それは残念乍ら事実。
何故スティーヴンのマイク・スタンドのベイスは円盤なのか?
何故スティーヴンのマイクにはマフラー(というかバンダナというか)が付いているのか?
JBのマイク・アクションを見ればそれは一目瞭然。
まぁ七十年代にはあの中にいけない白い粉を隠していたという即物的・合理的な理由も有ったそうだが。
彼等の16のリフはファンクの塊。今回それを再確認した。
まぁぎこちないけどね(笑)。その意味ではJBというよりはオハイオ・プレイヤーズとかファンカデリックとか、そんな感じかな。でも確実にグルーヴはファンクだった。
ジョーイ、トム、ブラッドが醸し出す独特のアンサンブルに乗っかるスティーヴンとジョー。この構図は変わらない。ボックス・セットに入っていたインストゥルメンタル・ナンバー「クレウィットハム (Krewhitham)」は、つまりスティーヴンとジョーがまだ顔を出さない時に三人(クレイマー、ウィットフォード、ハミルトン)がジャムっていたもの。こういうセッションはきっとよくやっていたのだろうな。
思えば今回は一曲目(いきなり「ドロウ・ザ・ライン」!)からして、トクスィック・トウィンズ=スティーヴン&ジョーは早速センター花道最先端で飛び道具役となり、クレウィットハムの三人は舞台に残り地味にグルーヴを作るという構図。解り易かった。
AEROSMITH
at Tokyo Dome
Nov.30, 2011.
01 Draw the Line
02 Love in an Elevator
03 Toys in the Attic
04 Jaded
05 Water Song/Janie’s Got a Gun
06 Livin’ on the Edge
07 Big Ten Inch Record
08 Lick and a Promise
09 Hangman Jury
10 What It Takes
11 Last Child/Sing a Simple Song
12 Red House
13 Combination
14 No More No More
15 I Don’t Want to Miss a Thing
16 Cryin’
17 Sweet Emotion
encore
18 Love Lives/Home Tonight
19 Dream On
20 Train Kept a Rollin’
21 Walk This Way
ドラム・ソロ他、数曲で、スティーヴン・タイラーがジョーイ・クレイマーの隣でフロア・タムやシンバルを連弾状態で合奏するシーンがあり興奮した。御存知の方も多いと思うが、彼は元ドラマーでもある。いくら歌い上げても彼の歌がビートを忘れないのはそのせいだと思っている。
又、ブルーズ・ハープ(ハーモニカ)を随所で聞けたのも嬉しかった。09なんて「これ演るんだ!」と驚き喜んだものだ。
「ラグ・ドール」が無かったのは残念。ロック・ファンに「スティール・ギター」というものの存在を教える絶好の機会なのだけれど。
又、決して嫌いではないものの多いと辛いスロウ・ナンバーは、10,15,16。セット・リストを毎回変える彼等とは言え「エインジェル」を固定曲から外していたのは意外。個人的には15や16より「エインジェル」の方が好きだけど。10は嬉しかった。
ジョーのソロ・コーナーは定番の一つであるジミ・ヘンドリクスのカヴァー12。ううむ・・・。一曲だけなんだから、折角だから自作曲で行けば良いのになぁ。
流石に後半は、スティーヴンの声が荒れて聞こえた。が、元々ハスキー・ヴォイスが好きな僕としてはとても好みの声だ。良い意味で枯れて来た。やっと(笑)。
そしてますますの宜保愛子っぷり。↓
ザ・ローリング・ストーンズの様に、四十歳頃から明らかに「今後も続けていける様に」という狙いから編曲や唱法を変えていったのと違い(それでも彼等は充分に「奇跡」だが)、エアロスミスは基本的に二十代のままの編曲、歌で今迄続けて来た。その意味ではザ・フーや AC/DC と同類。
全体に少しテンポは落ちた。しかしキーは落としていない。以前からギリギリの音域でシャウトしまくっていた彼の喉を思えば、これは驚嘆に値する。かなりコンディションには気を遣っている筈だ。
彼等を個々のテクニックで語るべきではないというのは暗黙の了解。特にジョーイ・クレイマーにはそちら方面かの風当たりが昔から強い。確かに自分でテンポを早くしておいてついていけなくなっちゃったりするし(笑)。それを愛おしく思えない人はエアロスミスを聞けない。技術面では基本的にブラッドとトムが支えている訳で。
ジョーイが更に音数を減らしていた。グルーヴを作る事に専念していた。テンポを落としていたのはおそらく彼の意思(というか自然とそうなった?)だろう。オカズを十六分音符で入れる事があまり無い。これは、或る意味では六十年代の R&B コンボの様な「間(ま)」を作っても大丈夫な程の結束を彼等が持っている証拠である。
彼等にしか作れないアンサンブル。いよいよ誰も代われない共同体になったのだろう。この数年のスティーヴンと四人のゴタゴタも、「雨降って地固まる」となっていると信じたい。新作にも期待している。だって、ライヴやカヴァー・アルバムは有ったけど、それを考えないと『ドロウ・ザ・ライン』以来、実に三十五年振りにこの五人がジャック・ダグラスと組むアルバムだもの!(※)
これからこの形での「昔乍らのエアロスミス」を続けるのは、正直かなり辛いだろうな。そんな事も考えつつ、しかし、否だからこそ、凄いなぁと感心してしまった。
(※)
ジャック・ダグラスとエアロスミス:
’74 Get Your Wings
’75 Toys in the Attic
’76 Rocks
’77 Draw the Line
’78 Live! Bootleg →ライヴ・アルバム
’80
Let the Music Do the Talking /The Joe Perry Project →ジョー・ペリーのソロ・プロジェクト
’82 Rock in a Hard Place →ジョー・ペリーとブラッド・ウィットフォード不在
’98 A Little South of Sanity →ライヴ・アルバム
’04 Honkin’ on Bobo →カヴァー・アルバム
が『ドロウ・ザ・ライン』後に出されている。
考えてみるとダグラスと組んだアルバムはオリジナル・ステューディオ(スタジオ)盤の方が少ない(ジョーのソロを含めれば)。
人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’11. (音楽紹介業)
コメント
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こんにちは!はじめまして。
ですよね、ウオークデスウエイ
とか、フアンキーですよね。
ドラムはゆるいかんじでまた
絶妙ですな。
ところで、シークですが今年初めてみて感動しました。
ドラマーはオマーの時と比べて
どうでしょうか?
あまり新任さんは個性がつかめなかったので、やはりオマーよかったですか?まあ、トニー、バーナード最強ですが。ビートがヘビー
でしたねー、やたら今回。 Like
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こまつさん
初めまして。発見が遅れました。返事が遅くなり御免なさい。
今年のシーク、いらしていたのですね。それは嬉しい。現ドラマー=ラルフのビート、ヘヴィでしたか? ロック/ファンク色という意味ではトニー、オマーと順に薄まり、(おそらくナイルの意向もあり)ラルフはソウル&ディスコ・マシーンとしての要素をシークに持ち込んでいるのだと思っています。
「ビートがヘヴィ」というより、ラルフがバンドに馴染んで来てより「タイト」になったという印象は有ります。きっと同じ感じ方で形容が違うのでしょう。
いつか御会いしましょう!
きっと来年も来てくれる事でしょう!
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