69 日記再録 2007.3.20.

(補遺部を一月三日に加筆)

2007年3月20日の日記。
(翌日、湘南ビーチFMウェブサイトのトップ頁に掲載)

 僕の音楽生活、岩石生活(R&Rライフ)に多大な影響を及ぼしている作家、松村雄策が「見えるのは墓ばかりである」と書いていた。彼はジム・モリスン、マーク・ボラン、ジョン・レノン等、鬼籍に入った面々を取り上げる事が確かに多い。成程ねと、それを僕は頭だけで理解したつもりになっていた。全く実感を伴った納得をしてはいなかった。しかし近年、遅れ馳せ乍らそれを心から理解している。

 JB、鈴木ヒロミツ、イアン・ウォーレス、実相寺昭雄、ボズ・バレール、そして今夜の番組で追悼したブラッド・デルプ(ボストン)・・・。特にこの秋冬は本当に多くの「我が人生の恩師」が亡くなった。これが今後は増える一方かと思うと気も滅入る、なんてね。 いや結構本音だけど。

 レイモンド・チャンドラー “The Long Goodbye” の新訳版が出た。翻訳はつまりカヴァー・ヴァージョンなので、初めてなのに新鮮な「再読」となっている(多分四度目)。先に読んでしまった「The Long あとがき」(笑)も興味深かった。訳者は村上春樹。カーヴァー、サリンジャーと、僕はむしろ彼の訳文を多く読んでいる事に漸く気付いている。

 そうか。死は、永遠の別れではなくて、長いさよなら、しばらく会えないね、なのだと思えば良いのか。絶対に拡大解釈だが。でも僕の場合、最重要ミュージシャン三名のうち二名とこの十年程でお別れしちゃってるからね。そういう風にでも思っておかないと。

 墓石を建ててるつもりで追悼番組やってます。いやホントだって。

補遺

(一月三日に加筆。驚くべき事に三人が揃って還暦で、しかも他は還暦以下という若さで亡くなっている。)

鈴木ヒロミツ
 2007年3月14日没 享年六十
 実力派GS「モップス」のヴォーカリストとしての彼を知った高校の時、かなりのショックを受けた。当時友人達と組んでいたバンドで(僕はキーボードとヴォーカル担当だった)「朝まで待てない」「御意見無用(いいじゃないか)」を歌っていた。

イアン・ウォーレス Ian Wallace
 2007年2月22日没 享年六十
 七十年代前半、『アイランド』『アースバウンド』期のキング・クリムズンを支えたと形容しても過言では無いであろうドラマー。八十年代には米西海岸でジャクスン・ブラウン等と仕事をしている。ジャクスンとの来日公演で僕は彼のプレイに接している事になる。が、実は当時は「ドラマーはラス・カンクルじゃない、バックはやっぱりセクションじゃない」という「がっかり感」が先に立ってしまい・・・、彼には悪い事をした。
 下記ボズ・バレール追悼をほんの少し前に番組でやってしまったので、曲の重複を避けけるべく「さあどうしよう?」等と番組内容を考えているうちに時は経ち・・・と、重ねて彼には本当に申し訳無い事をしてしまった。

ボズ・バレール Boz Burrell
 2006年9月21日没 享年六十
 前出イアン・ウォーレスと同じ時期のキング・クリムズンでヴォーカル&ベイス担当。当初はヴォーカルのみだったそうだが、何でも当初決まっていたベイシストが、その演奏レヴェルの高さに恐れをなして突如脱退、ギターの経験は有ったボズが初めて(!)ベイスを弾く事になったのだという。技術的に足を引っ張っていたとも言われる彼だが、そんな経緯を鑑みれば「健闘していた」と言えるのでは無いだろうか。
 歌声については、それはもう好みだから・・・。僕は嫌いじゃないけど。
 クリムズン王宮最初の物故者。後を追う様に上記の、しかも同時期のリズム隊相棒であったウォーレスも他界した事になる。
 七十年代半ばからはバッド・カンパニーで大成功を収めている。

ブラッド・デルプ Brad Delp
 2007年3月9日没 享年五十五
 自殺だそうだ。しかも発見者は婚約していた女性。
 一時脱退してもいて、それでもイントロでボストンと判る「音」なのは確かだが、それでもボストンの「声」と言えば矢張り彼だ。「声以外の全て」担当と言っても過言では無いリーダー=トム・ショルツは、「自分が良い歌声を持っていれば完全なワン・マン・バンドを作れたのに」等と思っているのかも知れないが、血の通う人間関係がバンド内に出来たのは、ワン・マンでは無かったからだとも言えると思う。
 いわゆるエリート・クラスのアメリカン・ロック・バンドである彼等は、思想的にも如何にもエリートっぽい方向性を出していた。
 ヴェジタリアン、自然主義、鳥獣保護(「毛皮を着ません」等など)といったものを声高に(アルバムのブックレットで!)主張し、同調者を殊更に募る、というこれ又「アメリカの善意溢れるおせっかいさん」の典型的な姿勢(笑)。
 でも、そうやって健康な身体を保持してたって心を病んじゃっちゃあしょうが無いじゃないの、ブラッド。
 聴きたかったなぁ、生で彼の歌声。

最重要ミュージシャン三名のうち二名
 つまりシークの中枢、リズム・セクション三名
ナイル・ロジャーズ Nile Rodgers
バナード・エドワーズ Bernard Edwards (1996年4月18日没 享年四十三)
トニー・トンプスン Tony Thompson (2003年11月12日没 享年四十八)
の事。
 コンサート会場のアンケートとかで「好きなミュージシャンを三組」「来日を希望するミュージシャンを三組」等という設問が有ると迷わずこの三人を書いたものだ。これってつまり「シーク」「シーク」「シーク」と書いている事になるのだが(笑)。
 贅沢な話ではあるが、会えて、サインを貰って(※)、色々話をした事のある「我が人生の恩師」が亡くなるのは本当に辛い。

 トンプスンの訃報が届いた時、長年のシーク仲間であるTaro曰く
「残るはナイルだけか。伊東四朗みたいだね。」

 ホントだね。
 ま、実際は伊東四朗がバナード、三波伸介がナイルで戸塚睦夫がトニーっぽいけど。
 って、何がどう「実際は」なんだよ(笑)。

(※) 僕のザ・パワー・ステイションのファーストLPには、メンバー全員とプロデューサー、即ち、
John Taylor
Andy Taylor
Robert Palmer (故人)
Tony Thompson (故人)
Bernard Edwards (故人)
のサインが入っている。今後揃う事は100%叶わない。辛いが、自慢のブツにはなってしまった。

人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’07.

人見 欣幸

音楽紹介業(ラジオ、活字、ライヴハウス、インタネット等で音楽を紹介)
1967年神奈川生まれ・育ち・在住
1978年より洋楽中心生活者
1991 文筆デビュー
1995 ナイル・ロジャーズにファンレターを渡す(交流開始)
1997 レギュラーラジオ番組開始
2011 Nile Rodgers/CHIC応援組織 "Good Times" を内海初寧と結成、同年よりウェブ番組 "Good Times TV" 開始(13年まで)
2019 新メンバーを加え、六月より "Good Times Tube" としてウェブ番組を復活

■favorite musicians:
Nile Rodgers,Bernard Edwars&Tony Thompson
山下達郎,伊藤広規,青山純&難波弘之
竹中尚人,加部正義&ジョニー吉長

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コメント

  1. Taro より:

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    >「残るはナイルだけか。伊東四朗みたいだね。」
    そんなこと言ったっけな(笑)。確かに実際は、伊東四郎はバーナードだな(笑)。
    しかし、本当に俺らの歳になると、去る人が多くなってきますな~。
    日々を精一杯生きなければと思いますな。 Like

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