823 ブルース『闇に吠える街』豪華版は「いくらなんでも」な六枚組・・・。

Bruce
Springsteen
 Darkness
 on the Edge
 of Town

 かねてより予告されていたブルース・スプリングスティーン 1978年の名盤『闇に吠える街』の豪華盤が十一月に発売されるという。

The Promise: Darkness of the Edge of Town Story
Bruce Springsteen

 こちらは CD ジャーナル誌のウェブサイト。

 前作にあたるサード『Born to Run 明日なき暴走』に続く豪華盤化となる。

 嬉しいのは勿論だが、困る。

 何故なら、

 六枚組なのだ・・・

CD1
remastered

CD2&3
The Promise

DVD1
The Promise: The Making of
 ’Darkness of the Edge of Town’

DVD2
Darkness of the Edge of Town
Paramount Theater, Asbury Park, NJ, 2009

Thrill Hill Vault (1976-1978)

DVD3
Houston ’78 Bootleg: House Cut

 初期の彼を知る者にとっては(等と偉そうに書いているが僕は1980年の『ザ・リヴァー』で彼を知って辿った後追いだが[※])、事務レヴェル(元マニジャーとの係争)からこの四枚目が特に難産であった事は有名だ。
 又、前作『明日なき暴走』の商業的な大成功により(その後を思えばまだまだ可愛いものだが)、録音に時間と情熱をよりかけられる様になったので、作曲は勿論、演奏や録音クォリティへのこだわりも格段に上がったのだろう。それはミュージシャンとしては嬉しい環境の変化だったのかも知れないが、契約がこじれて新曲をすぐに発表出来ないという状況は不満以外の何物でも無かっただろう。

 七十年代の後半は、そんな制作事情からの鬱憤、しかしそれをバネにしてのバンドとの更なる結束・成長そしてアルバムの完成・発売の喜びを反映していたかの様な強力なライヴを繰り広げていた事でも知られる。

 この時期の、ファンの間では「一番凄い時期のライヴ」の模様はブートレグ(海賊盤)で広く出回り、湘南ビーチFMの仲間である中嶋寿修もそれらを集めていた一人であったという。

 ’85年に発売された五枚組 (LP、CD 三枚分のヴォリューム) ライヴ盤は確かに素晴らしかったが、八十年代が多めに選ばれていたし、選曲にも不満が残った。

 七十年代後半のライヴが正規で商品化される事は長く長く長〜く望まれていた。

 それらが遂に正規盤として店頭に並ぶ。しかも映像付きである。(※2)

 しかし CD×3&DVD×3 の六枚組とは。
 因みに DVD と同内容のブルー=レイ・ディスク版での六枚組も出るという。

 CD1 はオリジナル・アルバムのリマスター。
 CD2&3 はアウトテイク集。全二十一曲。この『ザ・プロミース』は二枚組としての独立発売もされる。
 DVD1 は、九十分のドキュメンタリー。
 DVD2 には二本。昨年行われて話題となった「アルバム丸ごとライヴ」より『闇に吠える街』。そして ’76-8 年の様々なライヴの模様。
 そして DVD3 はおそらく当時のライヴを一回分丸ごと。タイトルからして画質や音質はそれなりのものだろうが、正規発売を判断した内容なのだから、最低限の基準はクリアしているのだろう。そう信じるしかない。

 兎に角、セット・リストを見ただけで興奮する。

 だって、1978年のライヴだよ。だよ!!

 遂に正規で七十年代後半の「ジャングルランド」の映像が発売されるのだ。
 「サンタが街にやってくる」の映像が発売されるのだ。
 ライヴの幕開けが「バッドランズ」の映像が発売されるのだ。
 後に『ザ・リヴァー』に収録される「ザ・タイズ・ザット・バインド」「ポイント・ブランク」の映像が発売されるのだ。
 ポインター・シスターズへの提供曲で当時のヒット「ファイア」の映像が発売されるのだ。
 パティ・スミス・グループへの提供曲(パティ・スミスとの共作)で同年のヒット「ビコーズ・ザ・ナイト」の映像が発売されるのだ。
 「ディートロイト(デトロイト)・メドリー」の映像が発売されるのだ。

 切りが無い。

 しかし。
 六枚組である。勿論定価は五桁。

 どうすれば良いというのだろう・・・。

(※)
 今から思えば「四枚だけ間に合わなかっただけ」なのだけれど、高校三年の初夏(1984年、『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』直前)に『明日なき暴走』を初めて本格的に体験した時には、それに間に合わなかった事を「何てこった!」と一生ものの悔しさと共に受け止めたものだ。
 十代の思い込みなんてそんなもの。なんて、まぁ、今の基本的にこの気持ちは変わらないけれど・・・。
 でも、『ザ・リヴァー』で彼を知ったのは今となっては誇りだ。「ハングリー・ハート」には間に合って本当に良かった。

(※2)
 2005年に出た『明日なき暴走』の三十周年盤で、1975年ロンドン公演の模様が DVD として商品化された(数ヶ月後に CD も単体で出された)が、まだ「上り調子期」であって全盛期ではないと思う。英国初トゥアーの模様で、ドラマーがマックス・ワインバーグになったばかり。最新盤『明日なき暴走』収録曲(「ジャングルランド」さえ!)への観客の反応はまだまだ静かなものだ。只ただ圧倒されているという感じだろう。
 よって、全盛期のライヴをひとコンサート単位でまとめて商品化する今回のボックス・セットの意義は大きい。

人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’10. (音楽紹介業)

人見 欣幸

音楽紹介業(ラジオ、活字、ライヴハウス、インタネット等で音楽を紹介)
1967年神奈川生まれ・育ち・在住
1978年より洋楽中心生活者
1991 文筆デビュー
1995 ナイル・ロジャーズにファンレターを渡す(交流開始)
1997 レギュラーラジオ番組開始
2011 Nile Rodgers/CHIC応援組織 "Good Times" を内海初寧と結成、同年よりウェブ番組 "Good Times TV" 開始(13年まで)
2019 新メンバーを加え、六月より "Good Times Tube" としてウェブ番組を復活

■favorite musicians:
Nile Rodgers,Bernard Edwars&Tony Thompson
山下達郎,伊藤広規,青山純&難波弘之
竹中尚人,加部正義&ジョニー吉長

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