140 8/14 終戦記念日イヴ。

August 14th, 2009. イシイ ポップス・イン・ザ・ボックス
提供:石井食品

vol. 594.

M1
16:03 DANCE WITH ME
Orleans

M2
16:07 CRAZY LITTLE THING CALLED LOVE 愛という名の欲望
Queen

M3
16:10 SHE’S A RAINBOW
The Rolling Stones

M4
16:15 BEING WITH YOU
Smokey Robinson

ミドル4:ジョー・ジャクスン(ジャクソン)
M5
16:21 SHANGHAI SKY
M6
16:29 TANGO ATLANTICO
M7
16:32 WILD WEST
M8
16:37 FORTY YEARS
Joe Jackson

M9
16:43 BLOWIN’ IN THE WIND 風に吹かれて
Bob Dylan

M10
16:46 I DON’T WANT TO TALK ABOUT IT もう話したくない
Rod Stewart

M11
16:51 PERFECT WAY
Scritti Politti

 ジョー・ジャクスンが1986年に発表した『ビッグ・ワールド』は、もしかしたら僕が一番好きな彼のアルバムかも知れません。初めて買った彼のアルバムであったという個人的な理由もきっと大きいのですが、内容が本当に素晴らしいのです。

 番組でも話しました通り(当番組としては珍しく長目の解説をしてしまいました)、直し・編集・差し替えといった或る種の「誤魔化し」が自在に出来る録音環境に敢えて反抗し、演奏者を全員揃えて「せーの」という一発録音で制作された、「自分が間違えたら最初からやり直しだ」という緊張した空気も封じ込められた一枚。彼のヴォーカルも含めて差し替え無し。ステューディオ・ライヴ仕立ての、しかしライヴ・ハウスでの録音。証人として客を入れ、「拍手・歓声は無し」を強制するという徹底振り。こだわり屋で、そしてひねくれ屋でもある彼らしい制作環境。

 それは考えてみれば当時から三十年程前にあたる五十年代以前は当然だった(それしか方法が無かった)やり方。R&R以前の録音物にも精通した彼が、その独特の緊張感に憧れてその制作姿勢を取ったと想像します。
 例えば映像の世界でも、現在のヴィディオで撮影した映像をその場で確認出来る・その場で編集が出来る時代の前はフィルムだったので、後で現像しないと画(え)を確認出来ないという緊張感が有りました。TVの生ドラマも本当の一発勝負でした。「お呼びでない」のギャグは出番を本当に間違えた時に生まれたというエピソードを御存知の方も多いでしょう。植木 等の瞬発力が生んだのです。

 それよりも身近な喩えがありました。カメラ。
 ディジタルになって、一枚一枚、撮ったその場でちゃんと撮れているのかが確認出来る様になりましたた。いくらでも表情やポウズをし直せる様になりました。
 便利になりましたが、でも、逆にその瞬間瞬間に注ぐ集中力は薄れたと思うのです。

 『ビッグ・ワールド』にはその「緊張感」が漲っています。狙いは見事に的中したのだと思います。
 全曲ではありませんが、録音の模様を収めたヴィディオが出ていました。気の毒な位にドラマーがカチコチでした(笑)。多分DVD化されていないと思います。増補新装再発売を希望する一作です。リマスターCDとの二枚組というのも良いですね。

 そしてもう一つ。本作がとても面白かったのは、六カ国語の解説が用意されていた点。
 番組でも話しましたがもう少し丁寧な説明をさせて下さい(←本ブログの存在理由でもあります!)。

 録音環境、メンバー、スタッフ等のクレジットに加えて、アルバム・タイトル、曲名そして歌詞も訳されていました。
 嬉しい事に日本語もその六カ国語に含まれていたのです。

 当時、僕はそれをとても興味深く読みました。勿論日本語と英語のみですが(笑)。そして想像したのは「これはどうやら英語を解する日本人では無く、日本語を解する英語圏人による日本語だな」という事でした。あてられている日本語が少々不自然で笑えたので。と言っても「誤訳」では勿論ありません(何箇所か間違った漢字や送り仮名はありますが)。その不自然と感じる日本語の方が意味がとても良く解るのです。成程!と膝を叩く日本語に置き換えられており、とても勉強になったのです。

 この賛辞の意味が少しでも伝わればと、曲名だけ並記してみます(意外にもインタネット検索で出て来ませんでした。僕の検索方法が下手なせいでしょうか?)。

“THE BIG WORLD”
『大世界』

WILD WEST ワイルド・ウエスト
 西部開拓地
RIGHT AND WRONG ライト・アンド・ロング
 正と悪
(IT’S A) BIG WORLD (イッツ・ア)ビッグ・ワールド
 世界は広い
PRECIOUS TIME プレシャス・タイム
 貴重な時間
TONIGHT AND FOREVER トゥナイト・アンド・フォエバー
 今夜、そして永遠に
SHANGHAI SKY シャンハイ・スカイ
 上海の空
FIFTY DOLLAR LOVE AFFAIR フィフティ・ダラー・ラブ・アフェア
 50ドルの恋
WE CAN’T LIVE TOGETHER ウィ・キャント・リブ・トゥゲザー
 一緒には暮らせない
FORTY YEARS フォーティ・イヤーズ
 40年(戦後40周年を迎えて)
SURVIVAL サバイバル
 生残
SOUL KISS ソウル・キス
 魂のこもったキス
THE JET SET ザ・ジェットセット
 金持ち旅行者
TANGO ATLANTICO タンゴ・アトランティコ
 (この曲は仮名表記のみ)
HOME TOWN ホームタウン
 故郷
MAN IN THE STREET マン・イン・ザ・ストリート
 一般市民

 感心する邦題、有りませんか?
 魂の「こもった」キスですよ。
 そうか、ザ・ジェット・セットって金持ち旅行者っていう意味なのか。

 あと、フィフティ、アフェア、ウィ、フォーティと、伸ばす「ー」が付かない仮名表記にも感心が行きます。
 まぁ、「V」は「ヴ」ではありませんし、ジャクソンはジャク「ソ」ンですが。

 尚、僕が持っているのは当時のLPです。現在、どういう仕様で流通されているのかは知りません。
 又、当時のCDには六カ国語ブックレットは封入されておらず、希望者は取り寄せて下さいという但し書きが印刷されていました(矢張り六カ国語で!)。

 、そうそう、番組での「ミドル4」です。
 M8がそういう邦題ですので、この時期にオン・エアしておきたかったのです。
 但し歌詞を読むと、「四十年前には味方同士が一つになっていたのに、今は・・・」というもの。四十年経ったけれど・・・というスタンスで書かれた曲です。美しい曲調なので誤解する所でした。これこそ日本語詞があって本当に良かった。

 それから更に四半世紀近く経ち、大きくなったとも小さくなったとも言える現在の「大世界」を生きるジョー・ジャクスン(ジャクソン)は果たして何を想う・・・?

人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’09. (音楽紹介業)

人見 欣幸

音楽紹介業(ラジオ、活字、ライヴハウス、インタネット等で音楽を紹介)
1967年神奈川生まれ・育ち・在住
1978年より洋楽中心生活者
1991 文筆デビュー
1995 ナイル・ロジャーズにファンレターを渡す(交流開始)
1997 レギュラーラジオ番組開始
2011 Nile Rodgers/CHIC応援組織 "Good Times" を内海初寧と結成、同年よりウェブ番組 "Good Times TV" 開始(13年まで)
2019 新メンバーを加え、六月より "Good Times Tube" としてウェブ番組を復活

■favorite musicians:
Nile Rodgers,Bernard Edwars&Tony Thompson
山下達郎,伊藤広規,青山純&難波弘之
竹中尚人,加部正義&ジョニー吉長

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