そうか、矢張りそういう事か。
スティーヴン・タイラーが鎮静剤の依存症に陥っており、リハビリテイョン施設に入所していた(過去形?)という。
辛い事実ではあるけれど、当事者以外の者がああだこうだと勝手に書きなぐった憶測だけが飛び交っている状況よりもよっぽど良い。
待っていた(本当にこれを待っていた)タイラー本人の公式コメントとして、エアロスミス脱退の噂は初めて否定された。
こちらはバウンス誌のウェブサイトより(以下のリンク先の多くも)。
もう「噂レヴェルの情報」(インタネット普及後の情報は早過ぎるし悪質振りが加速過ぎている)で一喜一憂するのは止そうと以前書いた。
なので、関連情報をいちいち本ブログでフォロウするのは避けていた。
現在、メンバーの発言から、時系列で彼等の動きを判る範囲で整理してみると、やっと見えてきた(これを書きたくて、本当にスティーヴン側の公式コメントを待っていた)。
番組では何度か触れたけどね。
『ジャスト・プッシュ・プレイ』にジョーは不満を抱いた(直後から発言していた)。
→『ホンキン・オン・ボーボウ』にスティーヴンは不満を抱いた(バンドのグルーヴを重視したカヴァー・アルバムだったので、つまりスティーヴンが好む「曲づくり」が出来なかったかららしい)。
→バンドのマニッジメントに不満だったスティーヴンが個人マニジャーを雇う。ライヴ会場でも楽屋が彼のみ別となり、顔を合わせるのは舞台上のみという状態へ。会話が極端に制限されたという。
→プロデューサーにブランダン・オブライエンを迎え、新作を制作し始めたが頓挫(※)。
→断続的に行われていたライヴが、スティーヴンの怪我で何度もキャンセルされる。
→スティーヴンが二年のオフを取りたいと希望。
→その期間にソロ活動をしたいと言っている。
→ジョー・ペリーは「待ち」の時間を持て余したくないのでソロ活動(アルバムはソロ名義、トゥアーは「ジョー・ペリー・プロジェクト」名義)。
→スティーヴン、エアロスミスを脱退か?の報。しかし見出しに反し、ジョーの発言によると「そう聞いた」だけで、スティーヴン側から何も連絡は無いという。
→同時に、他の四名はオフは取りたくない、直ぐにでもライヴを行いたい。その為には他のヴォーカリストが見付かれば、(代役として、或いは正式に?!)その人物とトゥアーに出るという選択肢さえ考えていると発言、これを「脱退か?」と恣意的に(でしょ?)に発展させた奴が居る。
→ジョー・ペリー・プロジェクトのNYライヴのアンコールにスティーヴンが飛び入り出演、「ウォーク・ディス・ウェイ」を歌い、自分はエアロスミスを脱退していないと発言。ジョーのインタヴューに拠ると、アンコール前に突然楽屋にやって来ての本当の飛び入りで、曲を決め、舞台へ上がり、歌い終わるなり去ったという。つまり何も会話は出来なかった。
→ブラッド・ウィットフォードがスティーヴンとドラッグの関連を示唆(ジョーはスティーヴン側の公式コメントを待つという事で控えていたそうだ)
→十二月に入り、雑誌数誌にジョーのインタヴューが載る(メインはソロ活動のプロモウション)。インタネット上で飛び交っていた噂と違う信憑性の高さを持っており、雑誌の「格」を見せつけた。これにより、バンドがどちらに転ぶかが当人達にも判らない(=スティーヴン次第)のだという、本当にかなりシリアスな状況であるという事が「ちゃんと」伝わって来た。
→今回のスティーヴン・タイラー側から出された正式コメント。漸くの、正式コメント。
どんなバンドもいずれは解散する運命だというのは勿論承知している。
特にエアロスミスの場合は、単に活動年数が長いというだけでなく、時代的・環境的そしてバンドの音楽性からしても、デビュー時の五人で今迄やって来ているだけでも凄い事であり、一人も物故者が出ていないのは奇跡であるというのは承知している。いつ、どんな形で最期を迎えても、もう仕方が無いとは思う。
でも、こんな切っ掛けでこのまま崩壊していくのだけは避けて貰いたかった。
辛い事実を伝える今回の報道だが、少なくとも理由が明確になったのは歓迎するべきだと思う。そう思うしか無い。
回復を、復帰を、復縁を、そしてマイ・ペイスで良いので今後も良い仕事を、出来れば来日も、と心より願う。
というのが既にかなりハイ・レヴェルな願いなのだけれど(笑)。
(※)インストゥルメンタル部分を仕上げ、スティーヴンの歌詞・メロディ待ちという段階になった数曲をスティーヴンが仕上げ(られ)なかったという。
ブレンダン・オブライエンは、『ゲット・ア・グリップ』のミクサーとしてロック界で広く知られる事となった(プロデューサーは故ブルース・フェアバーン)。
なんでも、前任ミクサーがああだこうだといじってはその度にバンドから駄目を出されて降り、次にオブライエンが呼ばれ、出した最初の音で「それだ!」と喜ばれたのだという。
実はそれは、取り敢えずリセットという事で、イフェクトやイコライジングを抜いた、つまり録音した当初の音をそのまま出しただけというものだった。
→結局、何もしないのが一番という事(笑)。
・・・という有名なエピソードが有る。
プロデューサー、エンジニア、ミクサーそして時にはギターリストとして、
Dan Baird ダン・べアード(元ジョージア・サテライツ)
The Black Crowes ザ・ブラック・クロウズ
Matthew Sweet マシュー・スウィート
Pearl Jam パール・ジャム
Stone Temple Pilots ストーン・テンプル・パイロッツ
Maria McKee マリア・マッキー
The Jayhawks ザ・ジェイホークス
Bruce Springsteen ブルース・スプリングスティーン
AC/DC
等など、古いロック好きには堪らない音を、しかも古臭くない形で仕上げる名手である。
九十年代の、僕がグッとくるアメリカン・ハード・ロックは彼が関わったものが多かった。
その彼がエアロスミスと再び組むという情報は今年の初め頃に流れ、傑作の誕生が期待されていた。
その計画が再始動する事を願う。
因みに僕は、おそらく多数派だろうけれど、『ジャスト・プッシュ・プレイ』は今ひと
つ、『ホンキン・オン・ボーボウ』は結構気に入った、偉いぞジャック・ダグラス!、という、どちらと問われればペリー寄りの好みのエアロスミス・ファン。
人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’09. (音楽紹介業)
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