2006年12月16日の日記。
(翌日、湘南ビーチFMウェブサイトのトップ頁に掲載)
数週間前の話になってしまうのだが触れない訳にはいかない。
彼の訃報にはかなり参った。番組でも話したが、冷静に言っても、彼は僕の精神世界の何パーセントかを作った人だからだ。
少し冷笑的な、しかし他人事ではない視座。
「お芸術」と揶揄されかねないギリギリの域に居る事もいとわない態度・作品。
秘めた笑い(これが大事)。
自分がメインではないという自覚と、それを最大限利用する身軽な発想力及び行動力そして説得力。
僕はそれらを未だ(とさせておいてくれ!)全く体得出来ていないのだ けれど、「憧れ」はこれからも持ち続けていくのだろう。
ウルトラマン、ウルトラセブンのヴァリエイションを広げた男。
番組内批判をやってのけ、それを商品価値として認めさせた男(ハヤタに間違えてスプーンを持たせちゃうんだもの)。
子供の視点(精神的な身長)を高くした男。
子供番組にクラシカルな音楽を見事に導入させた男(作曲家=冬木 透の功績も大きいが)。
正しい「ひねくれ」を全開にするインタヴュー等での遣り取り。
映画はストーリーではなく、あくまでも「画(え)」でものを語るのだという事を主張するアングル・照明・画面処理。
帝都物語
ウルトラQザ・ムーヴィー
姑獲鳥の夏
全てが魅力的だった。
実相寺昭雄よ安らかに。
遺作「シルバー假面」、渋谷でしかもレイト・ショウだけか。でも馳せ参じないと。
補遺
実相寺昭雄、2006年11月29日死去、享年六十九。
何と、時を同じくして「ウルトラQ」「ウルトラマン」の音楽を担当した宮内國郎も亡くなっている(11月27日死去、享年七十四)。
アースシェイカー「モア」みたいなウルQのテーマや、♪は〜るかな星が〜♪を書いた人である。
「スターライト・クルージン」で実相寺・宮内追悼として、多分「7ラシカ(セブン・らしか)葉山」として冬木 透と宮内國郎の音楽を特集したと記憶している。
実は「クラシカ葉山」関連で、チケット発売や公演日直前、そしてウルトラ関係者の追悼としてよくやっている特集なので明確には記憶していない・・・。
この年末にはJBも逝ってしまい、辛い年末年始だった。良く乗り越えたと思う。
今、久々にこの日記を読み、少し涙腺が緩んだ。
てめえの駄文に感心してりゃ世話無いが、改めて全くその通りだと思ってしまった。
ちなみに今年の冬、「姑獲鳥の夏」に続く京極堂シリーズの第二作となる映画が公開されるという。
遺作「シルバー假面」は観に行った。DVDも買った。役者の演技力に問題が有ったが、映像処理のセンスに衰えは感じられず、彼の美学が貫かれていた様に感じた。寺田 農が出演しているのが嬉しい。原案は、脚本執筆前に亡くなってしまった佐々木 守と実相寺。特に「ウルトラマン」での活躍で知られ、最初の「シルバー仮面」を手掛けた名コンビである。
今回の「シルバー假面」は、五十分程度のエピソード三話からなる連作で、実相寺は総監督としてクレジットされ、実際には第壱話のみ監督をしている。映像処理のセンスが違うのは当然だが、申し訳無いけれど二話三話とは、「違い」以上にその優劣が明白だった。三話の途中でうとうとしてしまった程だ(ひし見 ‘アンヌ’ ゆり子が出ているというのに!)。
という訳で、逆説的に「実相寺映像はやっぱり凄い」と思わせる、そんな残酷な連作となっている。
もしかしたら「体力的に三話全部は無理だ」という判断だったのかも知れない。そう考えたくはないけれど、五十分だからこそのハイ・クォリティだった可能性は、確かに有る。
メイキング映像がDVDに収録されている。ハッキリ言って姿がかなり痛々しい。本人は勿論、周りも彼の死期が近いのには気付いていただろう。
尚、演技指導は結構しっかりと行われていた。これで演技力の問題は演者自身の能力にある事が判明した(笑)。
彼の名を意識したのは、小学校高学年の頃。
「ウルトラマン」「ウルトラセブン」と、単なる「怪獣や宇宙人の名前を憶えるネタ」ではなく、漸く「作品」として向き合い始める事が出来る様になった頃、オープニング・タイトルのスタッフ・クレジットに目が行く様になった頃だ(※)。
「『キヌタ・ラボラトリー』って何だろう?」ってね(笑)。
金城哲夫(脚本)・円谷 一(監督)ペアらが王道の大活劇を作り出す裏で、佐々木・実相寺ペアは、只ただ重いだけの怪獣を登場させてウルトラマンを非力な奴にしたり、ウルトラマンが子供の敵になってしまう話をつくったり(子供が「ウルトラマンやめて! ガヴァドンを殺さないで!」と訴えるのだ)といった、パロディに近いセンスで作品の幅を広げた。
そして勿論大事なのはストーリー以上に画(え)だ。
その独特の映像処理が魅力的だった。「アップの実相寺」と言われるその効果的なアップやライト、シルエットの使い方はかなり実験的だ。世代的・時代的に「文化の中心はフランス」という世界観なのも窺える。それをTVで、しかもいわゆる子供番組でも貫いているのが潔い。
特に、王道脚本家=金城哲夫との素晴らしい合作である
ウルトラセブン 第八話
狙われた街 (メトロン星人登場)
を御覧頂きたい。
この路線が維持・支持されていれば、子供番組ではない「SFTVドラマ」が日本でも市民権を得たのではないだろうか。例えば「600万ドルの男」「バイオニック・ジェイミー」みたいな、大人が楽しめるSFが日本でも生まれた可能性は有ったと思う。
円谷プロの「怪奇大作戦」「マイティジャック」での挫折と子供向け番組制作への方向転換は痛かった。
以上、ほぼ毎年、新年の儀式に近いノリで「ウルトラセブン」全話を観、最終回に涙する人見が「ひとまず」お届けしました(笑)。続きは又いずれ。
音楽以外のネタというとこれしか無いので・・・。
人見 ‘Hit Me!’ 欣幸, ’07.
(※)朝日ソノラマから刊行され始めたムック「ファンタスティック・コレクション(通称ファンコレ)」の影響が強い。
コメント
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人見さま。さすがです! 素晴らしい~!! パチパチ♪
監督と脚本に誰が参加していたかは知っていても、ストーリーごとのコンビまでは気にしたことがありませんでした。
印象に残っているのは、やはり『史上最大の侵略』『ノンマルトの使者』、それと『ダークゾーン』かな。
そうそうストーリーとは関係なく、子供心に「南廣ってカッコイイ~」と思ったものでした(笑)。 Like
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nagiさん
いやいや。そんな「さすが」だなんて、照れるなぁ。
そんな貴方も「史上最大の侵略」「ノンマルトの使者」「ダーク・ゾーン」と中々良い好みで。ダンとアンヌが良い仲の話ですね、どれも。
大体、アンヌはモロボシ・ダンだけ「ダン」って呼び捨てなんですよね、職場なのに。いくら泊まり込みとは言え、公私混同(笑)。
そして南廣ときたもんだ! クラタ隊長の設定は、市川森一が「V3から来た男」を書く時に作りだしたものなのだそうです。キリヤマを主人公とした男の友情を描きたかったとの事。
最終回での冷徹ぶりとか、最高ですよね。
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