なんて、遠方でもないか。横浜からなので(否、断定は出来ないな。何処で遊んでいたのだろう?)
昨晩の事だ。深夜一時半頃に突然電話が鳴る。まぁ電話というものは突然鳴るものだが。
「はい人見です。」
「あ、人見さん?
中嶋です。夜遅くに済みません。」
「Jazzy Night」月曜日担当の中嶋寿修だった。
「済みません本当にこんな遅くに。」
彼はこの様にいつも低姿勢だ。礼儀正しい。多分こんな深夜に私に電話をしてくるのは初めてだと記憶する。後ろにはパーティ・ノイズと思しき賑やかな音が。
低姿勢で礼儀正しく、そして相手に不愉快な思いをさせる事無く、しかし自分のペイスで事を進めるのが彼だ。
ユーロピアン・ジャズだラテンだと自称「チャラい」イメッジで番組づくりをしているものの、そこらへん、彼は基本的にロックな男だ。
「良いよ良いよ、僕も全然寝てないから。」
私はそういう時に嘘はつかない。眠っていても、出られる時は出るし、余程疲れていたら出られないというだけの話だ(そしてそんな事は滅多に無い)。
その時、私は確かに眠ってはいなかった。眠くも無かったが、やる事が有って寝られずにいた。・・・本ブログの更新で手間取っていたのだ。まだ要領良く出来ない。
「あのー、人見さんに訊きたい事が有るんですよ。」
そりゃそうだ。
「シックのパーカッションの人の名前って何でしたっけ?」
「畜生、倍にして返すぜ」(石原裕次郎)
得意分野への問いは倍どころか十倍にして返す私だ。
「ジェラード・ヴェレース、又はジェリー・ヴェレース。96年からずっとシークのメンバーだよ。スパイロ・ジャイラの初代メンバーでその前は・・・」
「ジミヘン(ジミ・ヘンドリクス)と演ってたっていう・・・」
「そうそう。その人。」
「それっていつでしたっけ?」
「ウッドストック。パーカスは二人居るんだけど、ジミのすぐ後ろに居るほう(がジェラード)」
「七十・・・」
「六十九年ね。その時はジミは彼を『ジェリー・ヴェレース』って紹介してる。」
「その時のライヴって出てるんですか?」
「映画のサントラとして ’70年に数曲ね。九十年代になって単独で出た。最近完全版として出し直された。DVDも出てるよ。」
「あ、有難う御座居ますぅ。済みませんねこんな事で。」
おそらく彼はその時、同席していた(であろう)音楽仲間にジェラードやシークの話をしたのだろう。
四年前に葉山マリーナーのスタジオに来てくれたシーク御一行を、自費でレンタカーを借りて迄して、横浜のホテルに送り届けてくれた運転手が彼だ。(※)
「今の電話の相手さ、その時のDJでシックの追っかけをしてるんだよ」とか何とかネタにしてくれたのだろう、私の事も。
ともあれ、こうして昨晩、物忘れが目立つ年代に差し掛かった、と或る一人の男の悩みが解消された。役に立てて本当に嬉しかった。
実は結構こういう連絡は受ける。
(留守番電話)
「もしもし、○○だけど、あのさ、アース、ウィンド&ファイアでイントロが♪んなんなんなんなっ♪って曲、何だっけ? 分かったら返事下さい。ほんじゃね〜。」
簡潔。思えば彼は昔から長電話をしない男だった。
ちなみにそれは「Can’t Hide Love」。’75年の名盤『Gratitude(灼熱の供宴)』の最終曲。
「ア、もしもし〜? △△で〜す。酔っ払ってま〜す。あのさぁ、今、取引先さんとカラオケやりに来てんだけど、曲名分かんないのが有って、人見なら分かんだろうと思ってさ。」
「歌ってごらん。」
「あのさぁサビが(裏声で)♪God bless you〜 You make me feel♪とかなんとかいう奴。」
「今曲名言ってんじゃん(笑)。それは『You Make Me Feel Brand New。邦題は『誓い』。スタイリスティクス。(カラオケ・マシンには)『誓い』で入ってるのかなぁ…。」
「そうか。・・・あ、有った有った。それじゃあさぁ、別の曲でさぁ・・・。」
ーこれまでに何度か、矢張り似た局面で電話をしてきている彼は、最近三児の父となった。娘はスティーヴィー・ニックスを「パパの好きな人」としっかり認識しているという。
人を救うのは本当に嬉しい。そしてこの種の救済は実に楽しい。人の役に立つのは誇らしい。
得意分野ですからね(笑)。
何時でも良いです。皆さん何か訊きたいことが有れば御一報下され。
音楽関係なら、まぁ、割と知ってる方だとは思いますので。
人見 “Hit Me!” 欣幸, ’07.
(※)
しかも解散し、車を返却した後に、僕に夕食迄奢ってくれた。パラダイス・アンド・ランチ(ディナーだけど)。「有難う御座居ました」って、それは僕の台詞だろうに。でも押し切られてしまった。
ちなみに、往路は電車。
滞在先であったみなとみらい地区にあるホテルのロビー集合で、僕の引率のもと、タクシーで横浜駅、横須賀線はグリーン車(初めて乗った)、逗子から再びタクシー。
三十分間のグリーン車は隣がナイル・ロジャーズ(ロジャース)! 緊張したなぁ。
「知ってるか? 007の主題歌で(全米)ナンバー・ワン・ヒットなのはジュラン・ジュラン(デュラン・デュラン)だけなんだ。」
「バナード(バーナード・エドワーズ)の仕事ですね!」
「ザ〜ッツ・ライト!」
まるで自分の仕事を自慢しているかの様に嬉しそうに話す彼を見て、「ああ、こじれていた七年程のあの時期は、『仲違い』ではなく『別行動をしていた時期』という位置付けになっているのだな」と思ったものだ。
彼等は世界中を駆け巡っている仕事だが、飛行機とホテルとライヴ会場しか知らない類の「悲しきツアーメン」だ。
日
本でも、電車(新幹線以外)に乗ったり、普通の街中を(信号待ち等をし乍ら)車で通ったりする機会はあまり無いせいだろう、彼等がとても興味深く窓の外を見ていたのを憶えている。特に鎌倉近辺の木造家屋には「ウワ〜オ」と食いついていた。
瓦屋根なんて、実に魅力的なのだろうな。
ホテルに戻り、まだ緊張と興奮が収まらないままの(当然だ)僕に、キーボードのリチャード・ヒルトンが「おまえの普段の姿、仕事をしている姿、生活している地域を見られて面白かった(interesting)」が言葉を掛けてくれた。とても嬉しかった。
かれこれ二十年以上、レコーディングを中心にナイルをサポートをし続けている彼は、普段から結構「気配りの人」だ。
でも横浜、鎌倉、葉山と「ヨコ〜スカ」は結構違いますけどね(笑)。
又、彼等に同行する事無く、つまり僕を信用してホテルのロビーで見送ってくれたマニジャーのピーター・ハーマンも、彼等の無事の帰還を確認し、解散する際にロビーで「Good Job」と僕の肩(だったか背中だったか・・・)を叩いてくれた。
まぁ、十一日間連続、しかも二回公演のライヴから開放された、来日して初めてのオフ日だったので、「みんな大人だし、ついて行く程の事でも無いか」という事で彼も休みたかったのだろうけれど(笑)。
だからこそ、尚更に、番組に出演してくれた六人には本当に感謝している。
コメント
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遅くなりましたが、開設おめでとうございます。
最近、鼻歌歌って曲を調べてくれるサイトがありますが
人見さんの場合、曲の解説まで付けてくれるのだから
親切この上ないですね。
このブログも、大変お勉強になります。
さて先日はUnchainへのリクエストに答えてくださって
ありがとうございました。
まさかかけてくださるとは思わなかったので、うれしかったです!
関東での知名度はこれからですが、
きっとたくさんの洋楽ファンに愛されるバンドになると思います。
しつこくまたリクエストします。
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古いところへ失礼。
曲目問い合わせ、笑った!
You Make Me Feel の3児の父はアイツだな(笑)
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Taro
ソイツです(笑)。
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